知財判例データベース 書籍類に使用された題号に対しても商標権の効力が及ぼし得ることを認めた事例
基本情報
- 区分
- 商標
- 判断主体
- 大法院
- 当事者
- ジョン・○○(申請人、上告人)v. 株式会社社会評論(被申請人、被上告人)
- 事件番号
- 2005ダ22770
- 言い渡し日
- 2005年08月25日
- 事件の経過
- ソウル高等法院に差戻し
概要
102
題号としての使用に対しては商標権の効力が及ばないのが原則であるが、使用態様、使用者の意図、使用経緯など具体的な事情によっては題号としての使用が書籍の出処を表示する識別標識として認識され得るため、そのような場合にまで商標権の効力が及ばないものと見ることはできない。
事実関係
申請人は、1999年5月26日被申請人との間に申請人が著述した英語学習法について独占的な出版権を設定する契約を締結し、この出版契約により同年7月19日「英語の勉強は絶対にするな」という題号の書籍が出版されたが、同書籍は出版されるやいなや読者らの大人気を博し現在まで100万部以上が販売され、それにより「英語の勉強は絶対にするな」の内容とその著者である申請人は新聞と放送などを通して広く知られるようになった。その後、被申請人は「英語の勉強は絶対にするな」を申請人との協議や了解なしに他の書籍の題号の一部に使用し、これを製作・販売した。一方、申請人は2001年10月6日「英語の勉強は絶対にするな!」について商標を使用する指定商品を「第16類定期刊行物など10件」として商標登録を出願し、2003年11月7日に商標登録を受けた。このような状況下で、申請人は被申請人が申請人との協議や了解なしに「英語の勉強は絶対にするな」を題号として使用し製作・販売する行為は自身の商標権を侵害するものであるとしてその侵害の差止を求める訴えを提起した。これに対しソウル高等法院は題号としての使用に対しては商標権の効力が届かないため、たとえ被申請人が「英語の勉強は絶対にするな」を題号の一部に使用し該当書籍を製作・販売してはいても、これは商標的使用であるとは言えないため、申請人の商標権を侵害したと見ることはできないと判断した(ソウル高等法院2005年3月22日言渡2002ナ22610判決)ところ、これに対し申請人が上告した。
判決内容
書籍類の題号は特別な事情がない限り該当著作物の創作物としての名称ないしその内容を含蓄的に示すものであり、そのような創作物を出版し製造・販売しようとする者は著作権法に抵触しない限りは誰でも使用することができるものとして品質を示す普通名称または慣用商標のような性格を有するものであるため、題号としての使用に対しては商標法第51条の規定により商標権の効力が及ばないのが原則ではあるが、他人の登録商標を定期刊行物やシリーズ物の題号に使用する等、特別な場合には使用態様、使用者の意図、使用経緯など具体的事情によって実際の取引界で題号の使用が書籍の出処を表示する識別標識として認識され得るため、そのような場合まで商標権の効力が及ばないものと見ることはできない。被申請人は「英語の勉強は絶対にするな」を題号の一部とするシリーズ物の形式で本件書籍を製作・販売したところ、被申請人の「英語の勉強は絶対にするな」題号の使用態様、使用意図、使用経緯などに照らして被申請人は申請人の登録商標をシリーズ物である書籍の題号の一部に使用することによりシリーズ物である書籍の出処を表示しているものと見る余地があるため、原審としては被申請人の上記のような題号の使用が書籍の出処を表示する識別標識として認識され得る使用であるかどうかに対して審理しなければならなかったにもかかわらず、それに対して何ら審理・判断をしなかった原審判決には法理誤解や審理不十分の違法がある。
専門家からのアドバイス
本の題目はその本の内容を表示するだけで出版社などその出処を表示するものではなく、原則的にその商品を他人の商品と識別できるようにするために使用する標章ではないため、本の題目として使われた標章に対してはその標章と同一または類似の登録商標の商標権の効力が及ばないとされており、このような法理は既存の大法院判決(大法院1995年9月26日言渡95ダ3881判決)を通しても確認されたところがある。しかしながら、上記の大法院判決はこのような既存の原則論から一歩進んで具体的な事情に照らして題号が出処表示の機能をしている場合もあるため、そのような場合には別の判断が必要であると判示したものである。一般的な法理の適用において個別的且つ具体的な事情を十分に考慮しなければならないという点を明確にしたという点で意味のある事例である。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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