知財判例データベース MP3形式の音楽ファイルをP2Pで共有できるようにするプログラムを製作し配布した者に著作隣接権侵害の幇助者の責任を認めた事例

基本情報

区分
著作権
判断主体
ソウル中央地方法院第50民事部
当事者
社団法人韓国音源制作者協会(申請人)v. 株式会社ソリパダ(被申請人)
事件番号
2004カ合3491
言い渡し日
2005年08月29日
事件の経過
未確認

概要

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MP3形式の音楽ファイルをP2Pで共有できるようにするプログラムを製作し配布する行為は、たとえ中央サーバーからは個別利用者に他の利用者らのIPアドレスなどを直接提供せず、その利用者のうちのあるコンピュータに他のネット利用者らのIPアドレスを保管させ、他の利用者らにIPアドレスを配布する役割を担当させるようになっていても、利用者による著作隣接権侵害行為を幇助するものであり、従って、その侵害禁止請求の対象になる。

事実関係

被申請人の会社の設立者で代表理事として在職しているヤン・○○(「申請外人」とする)氏らは2000年5月頃、中央サーバーが個別利用者に他の利用者のIPアドレスなどを直接提供する方式の音楽ファイル共有プログラムである「ソリパダ1」を開発、配布し音楽ファイル共有サービスを提供し始めたが、これに対しては水原地方法院城南支院から音盤複製等の禁止仮処分を受けたところがある。その後、上記の申請外人らは2003年11月5日被申請人の会社を設立、「ソリパダ1」とは異なり、ネット利用者の中でインターネットの接続状況がよい利用者のコンピュータにネット使用過程で収集された他のネット利用者らのIPアドレスを保管させ、ファイル検索を試みる他の利用者らにIPアドレスを配布する役割を担当させる方式の「ソリパダ2」を開発して利用者らに配布した。さらに、この「ソリパダ2」をさらに改良し、音源検索画面に音源を提供する利用者のIDが表示されないように検索画面の一部を変更、ダウンロード時に接続が途切れる現象の改善、実名確認、個人ファイルアップロード機能やメール機能などを追加した「ソリパダ3」(「本件プログラム」とする)を開発、配布し、上記の仮処分決定にもかかわらず本件サイトを通したMP3ファイルの共有サービスを続けた。これに対し申請人は被申請人を相手取って本件プログラムの配布及び音楽ファイル共有サービスの提供禁止などを求める本件仮処分申請をした。

判決内容

ソリパダの音楽ファイル共有サービスは、ID、パスワードを登録すれば誰でも自由に利用できる点、誰でも容易に利用でき利用者間に特別な人的交流関係がない点、個人的な情報を何ら共有していない点、ソリパダの音楽ファイル共有サービスの登録会員及び平均接続者数が莫大な規模である点等に照らし、これを私的利用のためのものとして認めることもできないため、ソリパダのネット利用者のファイル複製及び伝送行為は申請人の著作隣接権を侵害する行為であるところ、被申請人のサービスはソリパダの音楽ファイル共有サービスを通し交換されるMP3ファイルの中で不法なファイルの数が占める割合、及び全体のダウンロード回数のうち不法なファイルをダウンロードする回数の割合は、適法なファイルの場合に比べて圧倒的に高いと見られる点、被申請人は単純に利用者らにMP3ファイル交換のための便宜を提供することに止まらず、上記の方式により本件プログラムを通したMP3ファイルの交換過程に深く関与していると言える点、同サービスにより莫大な規模の営業売上げ及び利益を得ているという点等に照らして、被申請人はそのサービス提供を通して著作隣接権侵害行為を幇助したものであると言える。これに対し被申請人は本件プログラムに基づいたソリパダの音楽ファイル共有サービスは、「ソリパダ1」とは異なり、個別利用者らのコンピュータと被申請人のサーバーが接続されない純粋な形態のP2P方式であるため、ソリパダの音楽ファイル共有サービスを通した個別利用者間のファイル交換行為に被申請人は全く関与していないから利用者らの違法なファイル交換行為を幇助しているとは言えないと主張しているが、ソリパダの音楽ファイル共有サービスに対する相当な規模の著作隣接権の侵害的使用が予見される点、「ソリパダ1」の場合と単純な技術方式の差に過ぎない点に照らして被申請人の主張は受け入れられない。

専門家からのアドバイス

本件は、不法な音楽ファイル交換を幇助する行為に対しては中央サーバーの役割が大きくないとしても侵害行為と認めている世界的な趨勢に従うものとして、特に刑事事件とは異なり正犯を特定せずとも幇助責任を認めた点、幇助行為者も著作権など侵害禁止請求の対象になり得ると言渡た点に意味があると言える。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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