知財判例データベース 映像物等級分類決定をする際に映像物等級委員会は等級分類申請人が適法な著作権者かどうかを確認する義務があると判示した事例
基本情報
- 区分
- その他,著作権
- 判断主体
- ソウル高等法院第4特別部
- 当事者
- 1.コナミ株式会社、2.コナミコンピュータエンタテインメント東京(原告、被控訴人)v.映像物等級委員会(被告、控訴人)
- 事件番号
- 2004ヌ22048
- 言い渡し日
- 2005年04月08日
- 事件の経過
- 被告の上告により現在大法院(2005ドゥ4724)で係属中
概要
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【概要】
家庭用ゲームに対する著作権侵害がほぼ明白なアーケードゲーム機に関して年齢制限のない全体利用可の等級分類決定をした映像物等級委員会に対し、上記家庭用ゲームの著作権者が等級分類決定の撤回を求めた事件で、映像物等級委員会は等級分類の申請人が正当な著作権者であるかどうかを審査する義務があり、等級分類決定に違法事由がある場合には、その処分を取消すことができると判断された。
事実関係
原告コナミコンピュータエンタテインメント東京(以下「コナミコンピュータ」とする)は原告コナミ株式会社(以下「コナミ」とする)の委託を受けて「WORLD SOCCER WINNING ELEVEN 7 INTERNATIONAL」(以下「本件ゲーム物」とする)を製作し、原告らは本件ゲーム物に対する知的所有権の共有を約定した。訴外ゲームコリアは本件ゲーム物を組み込んでアーケードゲーム機を製作し、ビデオ・ゲームなどの映像物について児童や青少年に閲覧させてもよいかを審議する機関である被告の映像物等級委員会に等級分類申請をし、被告はこのアーケードゲーム機に対して年齢制限のない利用等級全体利用可の等級分類決定(以下「本件等級分類決定」とする)をした。これに対し原告らは、被告が原告らの事前許諾なしに本件ゲーム物を本件アーケードゲーム機に組み込んで正当な権利がない状態で被告から等級分類決定を受けたとの点を示しつつ、選択的に本件等級分類決定により原告らの著作権などが侵害されたとの理由でその等級分類決定自体を取消すか、又は原告らが被告を相手取って提起した等級分類決定取消申請に対する拒否処分の取消しを請求し本件の訴えを提起した。第一審の行政法院は、訴外ゲームコリアが本件ゲーム物に対する正当な権利者でもないのに不正な方法で被告から本件等級分類決定を受けたと判断して本件等級分類決定の取消申請に対する拒否処分を取消すとの判決を下したところ、被告はこれを不服として控訴した。
判決内容
法院は、本件等級分類決定当時、被告に旧音ビゲ法上、等級分類申請人が真正な権利者であるかどうかを審査する権限がなかったという被告の主張に対して、被告は旧音ビゲ法により設置された機構として旧音ビゲ法の目的達成とビデオ物などと関連した産業の振興に協力する方向で等級分類業務を処理すべき義務を担っているため、等級分類申請の過程で申請者が正当な権利者であるかどうかを審査する権限と義務があると述べ、旧音ビゲ法施行当時に行った本件等級分類決定を事後に取消す法的根拠を備えていないという被告の主張に対しては、本件等級分類処分の取消しによってもたらされる既得権や信頼保護及び法律生活の不安定などの不利益よりも、本件等級分類決定を取消して正当な権利者を保護するという社会正義の公益の必要がより大きいとして、別途の法的根拠がなくても本件等級分類を取消すことができるとし、等級分類決定の取消申請を拒否した被告の処分は違法であるため取消さなければならないと判断した。
専門家からのアドバイス
音盤、ビデオ、ゲームなどの映像物を流通、製作、輸入するためには映像物等級委員会の審議を通過しなければならない。現行法(音ビゲ法第20条の3)では正当な権利を持っていない者が虚偽又は不正な方法で等級分類を受けた場合には、その等級分類を取消すように明文規定しているが、本判決は上記の規定が新設される前に下した等級分類決定であっても映像物等級委員会はその決定を取消さなければならないと判示した点に意義がある。 従って、等級分類を受けなければ配布できない映画、ビデオ、ゲームなどの映像物に関して著作権侵害が問題となった場合、侵害者に対する民・刑事上の措置とは別に映像物等級委員会に等級分類処分の取消しを求める申請をすることにより、安い費用で速やかに侵害行為を差し止める効果(音ビゲ法第49条によれば、等級分類決定が取消された後に映像物を流通、製作、輸入する者は5年以下の懲役又は5千万ウォン以下の罰金)が得られるということを参考とされたい。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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