知財判例データベース 分割出願された発明と原出願発明の同一性の判断基準について判示した事例
基本情報
- 区分
- 特許
- 判断主体
- 大法院第3部
- 当事者
- 第一製薬株式会社(原告、上告人)VS 国際薬品工業株式会社他(被告、被上告人)
- 事件番号
- 2002フ2778登録無効(特)
- 言い渡し日
- 2004年03月12日
- 事件の経過
- 破棄、差戻し
概要
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原告が原出願発明の分割出願として認められて登録された特許に対してその登録は無効であると判示した特許法院の判決を不服として大法院に上告した事件で、大法院は問題になった分割出願発明と原出願発明はその技術的思想及び技術構成が互いに異なる発明であると判示し、両発明が同一で無効であると判示した原審判決を破棄、差し戻した。
事実関係
「光学活性ピリドベンゾオキサジン誘導体の製造方法」に関する特許発明(以下「本件特許発明」)を原出願発明の分割出願として認められ特許登録を受けた原告を相手取って被告が本件特許発明の登録無効審判を請求した事件で、特許審判院は、本件特許発明の請求範囲第1項(以下「本件第1項発明」)と原出願発明の特許請求範囲第1項(以下「原出願発明」)が実質的に同一の工程を通じて目的とする化合物を得られるものであって両発明は同一の重複発明に該当して無効であると審決し、特許法院もまた同審決を維持した。これに対して原告は、特許法院の判決を不服として大法院に上告した。本件第1項発明は新規のIB化合物質を出発物質としてその中間体のIC化合物を経て最終目的物質である化合物(VI)を製造する方法に関するものであり、原出願発明は新規のX”化合物を出発物質として新規の中間体X(=IB)化合物を経て通常の方法で最終目的物質である化合物(VI)を製造する方法に関するものである。
判決内容
大法院は、2以上の発明を1出願にした場合、これを2以上の出願に分割する分割出願において、原出願のうち一部発明が実施例等の詳細な説明に記載されたものとして原出願の請求範囲に記載された発明と異なる一つの発明とみることができる場合には、その一部を分割出願することができ、この場合、発明の同一性については特許請求範囲に記載された両発明の技術的構成が同じであるかによって判断されるものの、その効果を参酌しなければならないという発明の同一性判断に関する法理を再度明らかにする一方、本件第1項発明と原出願発明は化合物(VI)を目的物質にするという点では同一であるが、原出願発明に付加されたX”化合物から中間体X化合物を製造する過程は収率面で最も有効な化合物(X=IB)を作る必須構成要素であって、本件第1項発明が予定していない新しい効果を持った工程であるとの理由を挙げて両発明の同一性を否定し、これと結論を別にした原審判決を破棄して、事件を原審に差し戻した。
専門家からのアドバイス
本判決は、特許発明の同一性に関する判断基準、すなわち発明の同一性の有無を判断するに当たっては請求範囲に記載された発明の技術的構成が同じか否かによって判断されるものの、発明の効果も参酌しなければならないという点を明確にする一方、具体的には技術的構成の差が課題解決のための具体的手段において周知慣用技術の付加、削除、変更等で新しい効果の発生がない程度の微細な差に過ぎないのであるならば、発明は同一であると見なければならないが、そうでない場合には、発明の同一性を否定しなければならないという点を再度明らかにしたところにその意義がある。
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