知財判例データベース 著作財産権侵害事件で告訴状に記載される犯罪事実の特定程度に関して判示した事例
基本情報
- 区分
- 著作権
- 判断主体
- 大法院
- 当事者
- 検事(上告人)VS ○○○他3人(被告人、上告人)
- 事件番号
- 2002ド446商標法違反(公訴取消)、不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律違反(公訴取消)、著作権法違反
- 言い渡し日
- 2003年10月23日
- 事件の経過
- 被告人1,2に対する公訴棄却の部分及び有罪部分 破棄、差戻し被告人3,4の上告棄却
概要
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「BABS BUNNY」及び「BUSTER BUNNY」に関する各著作権違反に対する被害者の告訴がないとみて公訴を棄却した原審判決に対し、大法院は、告訴は告訴人が一定の犯罪事実を捜査機関に申告し犯人の処罰を求める意志表示であるので、その告訴した犯罪事実が特定されるべきであるが、その特定の程度は告訴人の意思が具体的にどのような犯罪事実を指定して犯人の処罰を求めているのかを確定することができればよいとの前提の下に、「BABS BUNNY」及び「BUSTER BUNNY」を総称する「BUNNY キャラクター」についての告訴があり、全体的な告訴の経緯に照らしてみて、上記の告訴には「BABS BUNNY」及び「BUSTER BUNNY」についての著作財産権を侵害した旨が含まれていたと見るべきであるとの理由で、上記の公訴棄却の部分に対する原審判決を破棄し、事件を原審裁判所に差戻した。
事実関係
うさぎの絵が付された布地を製作した被告人1,2に対し、被害者の代理人は 1999年7月14日に被告人らが被害者の登録商標である「BUNNY」標章と同一の絵の布地を製作して被害者の商標権と著作権を侵害したという内容の告訴状を提出した。同告訴状には、被害者の著作物のうちの一つである「BAGS BUNNY」のみが列挙されていて、「BABS BUNNY」又は「BUSTER BUNNY」のような他の著作物の名称は記載されていなかった。原審は、告訴状の記載内容により被害者の告訴は「BAGS BUNNY」という著作物に対する著作財産権の侵害に限定されなければならないとし、従って、公訴事実である被害者の著作物の「BABS BUNNY」及び「BUSTER BUNNY」に対する著作財産権侵害の部分については親告罪と規定されている著作権法の規定に反して被害者の告訴なく公訴が提起されたという理由で公訴を棄却した。 一方、被告人らはこの他にもディズニーの「101匹わんちゃん」の主人公である「ダルメシアン」と同一又は極めて類似する犬の絵を付した布地を無断で生産、販売、又は所持をした。この部分に対し原審は「ダルメシアン」キャラクターが創作性ある著作物であることを認め、従って、被告人らの行為が著作財産権侵害行為に該当すると判示した。 検事は原審の公訴棄却の部分を不服として上告し、被告人らは「ダルメシアン」キャラクターの著作物の認定を不服として上告した。
判決内容
大法院は、告訴は告訴人が一定の犯罪事実を捜査機関に申告して犯人の処罰を求める意志表示であるからその告訴した犯罪事実が特定されるべきであるが、その特定の程度は告訴人の意思が具体的にどのような犯罪事実を指定して犯人の処罰を求めていることかを確定することさえできれば良いとし、検事が、うさぎの絵が印刷された布地を製作した被告人1,2に対し、商標法及び不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律違反で起訴した後、同被告人らに対して被害者の代理人が検察に告訴状を提出した後の告訴補充陳述書でも被害者の代理人がキャラクターの種類を特定しておらず、単に被告人1,2の行為が「BUNNY キャラクター」に対する著作権侵害に該当すると記載した点を考慮すると、被害者の代理人は告訴状で「BUNNY キャラクター」を様々なうさぎの絵の被害者の著作物を総称する用語として使用したとみるべきで、従って、当該告訴に被害者の著作物である「BABS BUNNY」及び「BUSTER BUNNY」に対する知的財産権を侵害したという趣旨が含まれたものとみなければならないと判示した。これにより、大法院は被害者の代理人が「BABS BUNNY」及び「BUSTER BUNNY」に対する著作財産権を侵害したという内容に対して告訴しなかったことを理由とした被告人1,2に対する控訴を棄却した部分を破棄して、この部分を再審理し、判断するために事件を原審法院に差戻した。一方、「ダルメシアン」キャラクターに対する著作財産権侵害関連の公訴事実に関連し、大法院は「ダルメシアン」は創作性ある著作物であり、従って、著作権法の保護対象に該当するので、これを無断で使用することは著作財産権侵害に該当するとしてこれを認定した原審判決を維持した。
専門家からのアドバイス
著作権法は、著作権侵害に対する刑事処罰を親告罪と規定しており、著作権犯罪に対する公訴は告訴があってこそ可能である。告訴対象である犯罪事実は特定されるべきであるが、特定の程度は告訴人の意思が具体的にどのような犯罪事実を指定して犯人の処罰を求めているのかを確定できる程度であれば足りるというのが大法院の立場である。本判決は著作権侵害罪において告訴事実の特定程度を提示していることにその意義がある。
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