知財判例データベース 営業秘密の当否及びサブライセンス契約の期間満了と契約更新権について判示した事例
基本情報
- 区分
- 商標,その他
- 判断主体
- ソウル地方法院南部支院第2民事部
- 当事者
- 世界物産株式会社(原告)VS ソンチャン・インターファッション他1
- 事件番号
- 2002カ合3229損害賠償(キ)
- 言い渡し日
- 2003年10月10日
- 事件の経過
- 確定
概要
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商標権者からサブライセンス権を含む商標ライセンスを受けた者とサブライセンス契約を締結して以来10余年同契約を更新、維持してきたが、サブライセンス契約の基礎になったライセンス契約が解約されることにより上記サブライセンス契約が存続期間更新なく期間満了で解約された事件で、裁判所は、サブライセンシーに契約の存続期間を延長することができる契約更新権がないと判示する一方、商標権者が自己の経営判断の下にサブライセンシーではない第三者とライセンス契約を締結したことは商標権者の正当な権利行使であるとした。また、営業秘密の侵害についてもそれを認めるに足りる証拠がないとし、原告の請求を棄却した。
事実関係
各種衣類製品を指定商品とする「ANNE KLEIN II」商標(以下「本件商標」)に対する商標権者である被告Kasper A.S.L Ltd.(以下「被告キャスパー」)は、日本国法人である訴外タキヒョウカンパニー(以下「タキヒョウ」)にサブライセンス権を含む商標使用権を設定した。原告の世界物産株式会社(以下「原告会社」)は、訴外タキヒョウから契約地域を大韓民国、ライセンス対象品目を女性衣類製品として本件商標に関するサブライセンス契約(以下「本件サブライセンス契約」)を締結した。本件サブライセンス契約は2001年12月31日付でその存続期間が満了する時まで約10年間更新、維持された。被告キャスパーは、大韓民国では訴外タキヒョウを通さず直接ライセンス事業をすることにし、本件サブライセンス契約の存続期間が満了する前の2001年6月に被告の株式会社ソンチャン・インターファッション(以下「被告ソンチャン」)に本件サブライセンス契約が期間満了により終了した後の2002年度から女性衣類製品に本件商標を使用することができる権利を付与した。一方、原告会社の職員の一部(以下「訴外人ら」)は原告会社の本件サブライセンス契約が2001年12月31日付で終了するという事実を確認して原告会社を退社し被告ソンチャンに入社した。これに対して原告会社は、被告らの行為が独占規制及び公正取引に関する法律上の不公正取引行為に該当し、また、違法な契約侵害に該当すると主張する一方、被告ソンチャンの営業秘密侵害及び不当人材誘引・採用による営業権侵害を主張し、被告を相手取って損害賠償請求訴訟を提起した。
判決内容
裁判所は、被告キャスパーが原告会社と訴外タキヒョウ間の継続的な取引関係を不当に介入して原告会社の契約更新権ないしは期待権を違法に侵害したかに関連し、原告会社に本件サブライセンス契約の存続期間を延長することができる契約更新権があると見ることはできず、被告キャスパーが訴外タキヒョウに対して原告会社との取引を中断するよう不当な圧力を加える等の直接的な契約侵害行為をしたと見ることもできないだけでなく、被告キャスパーが被告ソンチャンとライセンス契約を締結する行為は、被告キャスパーの正当な権利行使であると判示した。さらに、訴外タキヒョウからその権利範囲内で再度商標使用権を許可されたに過ぎない原告会社としては、本件サブライセンス契約に基づく契約上の権利を直ちに被告キャスパーに主張することはできないと判示した。一方、裁判所は、訴外原告会社の職員が被告ソンチャンに離職した際に持って行った本件商標が付された衣類製品(以下「本件製品」)関連の営業情報が、相当な努力によって管理され、公開されておらず、独立した経済的価値を有する営業上の秘密に関する情報であると認めるに足りる証拠がなく、また、訴外人が自らの意思で被告ソンチャンに転職した事実を考慮すれば、被告ソンチャンが原告会社の事業活動を妨害する目的で訴外人を不当に誘引、採用したと見ることもできないと判示した。
専門家からのアドバイス
本件の根底には、契約相手を選択できる権利、すなわち契約自由とその限界に関する問題がある。上記判決は、商標権者としては独自の経営上の判断により取引相手方を選択する権利があり、そのような権利に基づいて新しい取引業者を選択した結果、それによって既存の取引業者の契約更新に対する期待が霧散となったとしても、これは商標権者の正当な権利行使による不回避な結果に過ぎず、商標権者に責任を問うことはできないと判示し、契約自由の原則を再確認したところにその意義がある。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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