知財判例データベース 侵害品が原告の製法特許で製造される物と同一の場合に、侵害品が当該特許を使用しているとの推定を認めた事例

基本情報

区分
特許
判断主体
ソウル地方法院南部支院第5民事部
当事者
グラクソ・グループリミッテッド(原告)VS 亜州薬品工業株式会社(被告)
事件番号
2002カ合3175特許権侵害差止
言い渡し日
2003年10月30日
事件の経過
確定

概要

66

オンダンセットロンという新規物質の製造方法に関する特許権を有している原告が、これと同一の物質を含有している原料薬品を含有した製品を生産、販売した被告を相手取って原告の特許方法による実施行為の差止を求めた事件で、裁判所は、生産方法の推定規定を適用し、被告の特許権侵害を認めた。

事実関係

原告は、医薬品及びその原料の発見、開発、製造及び販売を目的に設立された会社であって、「オンダンセットロン」と呼ばれる新規の抗嘔吐剤を開発し、大韓民国で発明の名称を「ヘテロシクリック化合物の製造方法」とし、同新規物質に対する製造方法を特許出願し、特許権(以下「本件特許方法」)の設定登録を受けた。被告は、本件特許方法の目的物質であるオンダンセットロンを含有した抗嘔吐剤(以下「被告製品」)を国内で製造、販売したが、被告製品の原材料であるオンダンセットロンは、スペイン法人である訴外ビタ-インベスト, S.A(以下「ビタ社」)から輸入していた。ビタ社はオンダンセットロンの製造方に関してスペイン、韓国等で特許権を有していた。

判決内容

裁判所は、本件特許方法の目的物質であるオンダンセットロンが新規物質で、被告製品は本件特許方法の目的物質であるオンダンセットロンを含有しており、特許法第129条により被告製品が本件特許方法によって生産されたものと推定されるとしたうえ、特許法第129条所定の生産方法の推定を覆滅するには、特許された生産方法の権利範囲に属さない異なる生産方法を提示しなければならないばかりでなく、その生産方法が特許権侵害が問題になる物を生産するに当たって現実的に使用されているという点まで立証しなければならないと生産方法の推定の規定の法理を明確にした。そのうえで、ビタ社が本件特許方法でないオンダンセットロンの製造方法を特許登録した事実を知ることはできるが、被告が提示した製造管理記録書等の証拠では、実際にビタ社の特許方法によりオンダンセットロンを生産していることを証明するには足りないとし、生産方法の推定規定を適用し、被告の特許侵害を認めた。

専門家からのアドバイス

物を生産する方法の発明に関して特許がされた場合に、その物と同一の物は特許された方法によって生産されたものと推定される(特許法第129条)。本判決は、侵害をしたと主張された者(被告)が、生産方法の同推定を覆滅するには、具体的な生産方法を特定、開示してその生産方法が特許方法の権利範囲に属さないという点、さらに当該生産方法を現実的に実施して目的物質を製造している点まで立証しなければならないという被告の立証責任を明確にする一方、被告主張の生産方法が特許登録されたという事実だけではそれが実際に使用されている製法であるという点が立証されるわけではないという点を明らかにしたところにその意義がある。 なお、物を生産する方法の発明である場合には、その方法を使用する行為以外に、その方法によって生産したものを使用・譲渡・貸与・若しくは輸入し、又はその物の譲渡若しくは貸与の申し出をする行為も当該特許の実施に当たる(特許法第2条3号)。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、柳(ユ)、李(イ)、半田
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195