知財判例データベース 著作物の創作性及び実質的類似性に関する判断基準
基本情報
- 区分
- その他,著作権
- 判断主体
- ソウル高等法院 第5民事部
- 当事者
- 金ジョンゴン(原告、控訴人)VS 株式会社韓国ニュートン(被告、被控訴人)
- 事件番号
- 2002ナ22610著作権侵害停止
- 言い渡し日
- 2003年08月19日
- 事件の経過
- 上告(大法院2003ダ47782)
概要
57
原告が出版権を有する日本語原版漫画の韓国語版「戦略三国志」と被告の「スーパー三国志」漫画図書は、原典の共通部分を除外した具体的な表現などにおいて相当部分類似しており、これは原告の出版権を侵害した行為に該当すると判示し、被告の上記の著作権侵害行為によって被った原告の損害額を算出しつつ、この部分に関する1審の棄却判決を取り消した。
事実関係
原告である金ジョンゴンは、国内でいろいろな版本で出版されている中国の古典であるナ・グァンジョンの「三国志演義」に関連して1993年6月30日付で「戦略三国志」という漫画図書の日本語原版著作権者及び関連出版社との契約を通じて上記の日本語原版漫画の韓国語版に対する排他的・独占的出版権を取得した後、現在まで同契約により上記「戦略三国志」の韓国語版を国内で出版し、被告株式会社韓国ニュートンは1999年7月10日から「スーパー三国志」という漫画図書の初版本を出版して、同年11月1日付で初版本を一部修正した再版本を出版している。
判決内容
同法院は、漫画「戦略三国志」が創作性のある著作物であるかの問題に関連して、著作権法が要求する創作性とは、完全な意味の独創性をいうのではなく、単にある作品が他人のものを単純に模倣したところがなく作者自身の独自の思想又は感情の表現を含んでいることを意味するだけであるから、著作物にその著作者自らの精神的努力の所産としての特性が現れていて、他の著作者の既存の作品と区別できる程度であるならば、創作性の要件が満たされているとした上、これにより「戦略三国志」の原著作者がこれを全部創作したのではなく、その中で部分的に中国の漫画の原典と類似する表現が存在したとしても、それが他人の作品をそのまま模倣した程度に至ると認める資料がない以上、「戦略三国志」を創作性のある著作物であると認めた。また、同法院は、「三国志演義」を共通の原著作物とする二次的著作物である被告の「スーパー三国志」と原告の「戦略三国志」の間で実質的な類似性があるかを判断するに当たっては、創作的な表現形式に該当するもののみを挙げて比較しなければならないとした上、既にあらゆる人の共有に属するストーリー部分を除き、原告の「戦略三国志」が持つ独創的な要素及び被告の「スーパー三国志」のうちこれに該当する要素を比較して、人物の表現に関する部分に対しては両著作物間の実質的類似性は認めず、残りの部分の人物の対話、カット割り、その他人物の表情・動作及び動植物・建物等周辺の描写に対する部分では両著作物の実質的類似性を認め、これにより原告の「戦略三国志」を相当部分模倣した被告の「スーパー三国志」は出版権の侵害に該当すると判示した。一方、同法院は、被告の上記の著作権侵害行為によって被った原告の損害額を算定するに当たり、被告の「スーパー三国志」が持つ特徴及び被告自体の営業網に関連する被告の寄与度を考慮して、被告の「スーパー三国志」の販売部数の約20%を、被告の「スーパー三国志」によって販売されなかった原告の「戦略三国志」の販売部数とし、同部数に原告が「戦略三国志」を販売することによって得た利益を乗じた金額を被告の出版権侵害行為によって原告が被った損害額と算定した。
専門家からのアドバイス
本件判決は言語のや図画の著作物の創作性の判断基準を提示する一方で、既にあらゆる人の共有(public domain)に属する著作物を利用して作成された二次的著作物間の実質的類似性を判断するに当たって、主題、事件及び展開過程等、ストーリー部分は共有に属するものとして実質的類似性を判断する基準から除外したという点に意義がある。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、李(イ)、半田(いずれも日本語可)
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195