知財判例データベース ドメイン名と関連した争いで、実体法でない統一ドメイン名紛争処理方針に基づいて判示した事例
基本情報
- 区分
- ドメイン
- 判断主体
- ソウル地方法院 第12民事部
- 当事者
- 金へスク(原告)VS クレジットコマーシャルデフランス(被告)
- 事件番号
- 2002カ合35343インターネットドメイン使用禁止等
- 言い渡し日
- 2003年12月26日
- 事件の経過
- 控訴
概要
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「ccfhsbc.com」及び「hsbcccf.com」ドメイン名(以下「本件ドメイン名」)の登録者である原告が被告を相手取って本件ドメイン名に対する被告の使用差止請求権不存在確認を求めた事件において、裁判所は、統一ドメイン名紛争処理方針第4条により被告に本件ドメイン名を保有する正当な利益があって被告の営業標章である「CCFHSBC」及び「HSBCCCF」と本件ドメイン名は類似し、原告は本件ドメイン名に対する正当な利益がなく被告の本件ドメイン名等の登録妨害を目的として本件ドメイン名を先行獲得していると判示し、被告に本件ドメイン名の使用差止を請求する権利があることを認めた。
事実関係
訴外崔ミョンジンは、「hsbccard.com」ドメイン名の登録者としてHSBC金融グループの持ち株会社であり「HSBC」関連商標権者である訴外HSBCホールディングスPLCが「CCF」を要部とする商標の商標権者である被告を引き受けることにした事実が国内の日刊新聞等で報道された日の2000年4月2日付で「HSBC」と「CCF」を結合した「ccfhsbc.com」及び「hsbcccf.com」ドメイン名を追加して国内登録機関に登録したが、「hsbccard.com」ドメイン名を被告に移転せよとのWIPO仲裁調停センターの決定を受けた後、妻である原告に本件ドメイン名を移転した。被告は、2002年1月29日付で統一ドメイン名紛争処理方針(Uniform Domain Name Dispute Resolution Policy、以下「UDRP」)及びその手続規則(Rules for Uniform Domain Name Dispute Resolution Policy、以下「Rules」)により本件ドメイン名等の登録者である原告を相手取ってWIPO仲裁調停センターに本件ドメイン名を被告に移転することを命じるよう要求する旨の手続申請をし、同仲裁調停センターは被告の申請を受け入れ、2002年4月30日付で本件ドメイン名等の移転を命じた。登録機関は、同決定があった後の2002年5月27日に電子メールで原告に10日以内に管轄裁判所に提訴することを通報し、これにより原告は、2002年6月4日付で裁判所に訴えを提起した。
判決内容
裁判所は、本件の争点を被告がUDRP第4条によって原告に本件ドメイン名等の移転命令を申請できる権利を有するかどうかにおき、本件が同条a.(i)ないし(iii)項の要件を充たしているかどうかについて判断した。裁判所は、UDRP第4条a.(i)項により、被告に「CCFHSBC」や「HSBCCCF」に対する権利があるかどうかについて、規定の権利(right)とは、正当な利益を含む概念であると定義したうえ、被告は「CCFHSBC」や「HSBCCCF」という標章を商標やサービスマークとして使用する正当な利益を有しており、さらに本件ドメイン名はこれらの標章と類似し、被告が国内で「CCFHSBC」や「HSBCCCF」という標章に対する商標又はサービスマークの登録がなくても商標やサービスマークの登録が正当な利益の発生要件であると見ることができないと判示した。第二に、UDRP第4条a.(ii)、(iii)項に関して、本件ドメイン名等の最初の登録者が訴外崔ミョンジンであった事実、崔ミョンジンが、自分が登録していた「hsbccard.com」ドメイン名に関する移転決定があった後、しばらくしてから妻である原告に本件ドメイン名を移転した事実及び本件ドメイン名に開設されたサイトの運営者が同崔ミョンジンであるという事実等を総合し、本件ドメイン名等の実質的な登録者は崔ミョンジンであると判断する一方、本件ドメイン名をアドレスとして開設されたサイトが長期間にわたって放置されている事実等に照らし、上記の崔ミョンジンが本件ドメイン名に対して正当な権利や利益がないだけでなく、さらに不当な先行獲得を通じて被告の本件ドメイン名等の登録を妨害することにより経済的な利益を得る目的で本件ドメイン名を登録したと判示した。これにより裁判所は、被告に本件ドメイン名に対して使用差止を請求する権利があり、従って、被告にこのような請求権不存在の確認を求める原告の請求は理由がないと判示した。
専門家からのアドバイス
最上位のドメイン名と関連した既存の裁判所の判決は、商標法や不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律という国内実体法を準拠法として該当ドメイン名の登録や使用が商標権侵害又は不正競争行為に該当しているか否かを判示した場合又は国際裁判管轄及び外国判決の国内執行に関して判示した場合が大部分であった。本件は、裁判所が、最上位のドメイン名紛争に関する調停に対する不服手段としての司法的審査において、国内の実体法でない統一ドメイン名紛争解決方針(UDPR)という紛争調停規定に基づいて判断したという点で意義がある。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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