知財判例データベース 書名の使用に関して判示した事例
基本情報
- 区分
- 著作権,不正競争
- 判断主体
- ソウル高等法院
- 当事者
- チョン・チャンヨン(申請人、被控訴人)VS 株式会社社会評論(被申請人、控訴人)
- 事件番号
- 2002ナ3596仮処分異議
- 言い渡し日
- 2002年09月04日
- 事件の経過
概要
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著作者である申請人と出版業者の被申請人は出版契約及びコンサルティング契約を締結し、「英語は絶対、勉強するな!」という書名を使用した書籍を製作、販売してきたが、その後被申請人が申請人に対価を支払わないで本件書名を使用して更に別の書籍を販売したのに対し、申請人は「英語は絶対、勉強するな!」が申請人の著作物として申請人の商品に該当し、そのような被申請人の行為が著作権侵害、不正競争防止法上の商品主体混同行為及び営業主体混同行為に該当すると主張して被申請人を相手取って同書名を使用した書籍印刷配布禁止等を求める仮処分を申請し、裁判所は本申請を認め、その仮処分異議事件の控訴裁判所であるソウル高等法院も原審の決定を維持した。
事実関係
申請人は1999年5月26日に被申請人との間に申請人が著述した英語学習法に関して期間3年の独占的な出版契約を締結し、同契約に基づき「英語は絶対、勉強するな!」という書名の書籍が出版された。この書籍が100万部以上販売され、大きな反響を得るや、被申請人はその英語学習法を具体的に実践するためのテープ教材付の書籍の発刊を計画し、申請人以外の者にその内容を著述させた後にその著作権の譲渡を受けて各著作物に本件書名を使用してテープ教材付書籍を販売した。それらの書籍の出版の過程で、2000年2月12日に申請人と被申請人の間に、それらのテープ教材付の書籍に関して申請人の英語学習法のコンセプトが維持されるよう申請人が助言し、被申請人が謝礼金を支払うこと等を内容とするコンサルティング契約が締結された。ところが、その後、被申請人は、申請人との協議や申請人の了解、申請人に対する対価の支払いなくして上記とは別途に本件書名「英語は絶対、勉強するな!」を使用した書籍を申請人の名義で更に製作、販売した。
判決内容
一般的に著作物の書名自体は著作物の標識に過ぎず、独立した思想、感情の創作的表現であるとは見難く、著作物としての保護を受けられないところ、本件書名は文章的構成を持ち反語的な意味をもっていて一見独特に見えるが、既存の通念化された英語学習方法を拒否するという標語的な意味を伝達するものであって創作的表現というよりはアイディアの領域に該当し、書名それ自体だけでは著作物であると見ることは困難である。また、一般的に著作権者が自己の著作物に関して出版業者に出版権を設定した場合、出版権者は設定契約で定めるところにより著作物を原作そのままで出版する権利と義務があるところ、その権利はその設定期間中、当該著作物を出版しこれを商品化させることができる独占的な権利であって、出版権を設定した後は著作権者でもその著作物を原作どおり出版することができなくなるものであるので、たとえ著作権者が著作した無体物である著作物の内容と表現は著作者に帰属するものであるとしても、そのような内容と表現を出版権者が出版することによって生産された有体物である書籍という商品は出版権者に帰属するので、本件書籍は申請人の商品と見ることができない。一方、一般的に「営業」とは、経済的利益や対価を得ることを目的とする事業をいうところ、営業主体混同行為における営業を、商業、工業、農水産業など伝統的な営利事業に限定するのではなく、文芸、著述活動上の事業、芸能活動状況の事業等と独自の経済活動を営むものであれば、幅広くこれに該当すると見ることが相当であるので、本件の対象の英語学習法に関する著述業又は営業主体混同行為の営業に該当する。本件に関する弁論の全趣旨を考慮すれば、申請人は自己が創案した独創的英語学習方法に関して著述活動を続けることによって営利を目的に英語学習法に関する著述業を営んでいると言うべきで、本件書名は申請人が著述した代表的な書籍の名称であり、申請人のそのような営業の標識として国内に広く認識されたと言うべきであるので、被申請人が直接著述し又は第三者にその内容を著述させて著作権の譲渡を受けた書籍に本件書名をその書名の一部に使用する方法で本件書籍を製作、出版する行為は、消費者に本件書籍が申請人が著述したものであるか、又は申請人と営業上、契約上、組織上何らかの関連があるものと誤認、混同させるもので、本件書籍の広告、販売及びインターネットウェブサイトを通じた情報提供だけでは本件書名が被申請人の営業標識として広く知られて通用しているものと認めるには足りないので、特別な事情がない限り、不正競争防止法上の営業主体混同行為に該当すると言うべきである。
専門家からのアドバイス
書籍の書名が著作権で保護されないとしても、商標、サービスマーク、又は不正競争防止法上の商品・営業標識としての保護さえも否認されるものではない。この判決は、問題となった標章が付された商品の主体ではなく商標法に基づく差止請求はもちろん不正競争防止法上の商品出所の混同可能性があるという点を理由にする不正競争防止法上の差止請求もできない権利者であっても、著述業と関連しては不正競争防止法上保護される営業標識に該当すると主張することが可能であると判示した点に意味がある。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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