知財判例データベース 類似商号の使用の違法性の判断基準に関する事例
基本情報
- 区分
- 不正競争,その他
- 判断主体
- 大法院
- 当事者
- パワーコム株式会社(原告、上告人)VS 株式会社パワーコム(被告、被上告人)
- 事件番号
- 2001タ73879 損害賠償(キ)
- 言い渡し日
- 2002年02月26日
- 事件の経過
- 確定
概要
6
ソウルに本店を置いて電子部品・電子製品・半導体部品の卸小売業及び輸出 入業等の事業を行う原告会社は1999年11月から「パワーコム株式会社」に 商号を変更したが、被告会社が2000年1月26日にソウルを本店として「株式 会社パワーコム」という商号を登記して電気通信回線設備賃貸事業、総合有 線放送分配網及び伝送網事業等の事業を開始した。これに対して原告は、商法上の商号権の侵害、不正競争防止法上の不正競争行為、逆混同による信用の毀損による損害賠償を求める訴えを提起し、大法院は原告の請求を棄却し た原審の判決を維持した。
事実関係
原告会社は1995年6月20日に本店所在地をソウル特別市、資本金6億4,000 万ウォン、設立目的を電子部品・電子製品・半導体部品の卸小売業及び輸出 入業等として設立された会社であり、電子部品・電子製品・半導体部品の需 要者である電子製品製造会社又は消費者を主要顧客として同目的事業を行ってきたが、その商号を1995年12月29日に「パワーコム電子株式会社」に、1999年11月3日に「パワーコム株式会社」に変更してその各変更登記を完了 した。 被告会社は2000年1月26日に本店所在地をソウル特別市、設立目的 を電気通信回線設備賃貸事業、総合有線放送分配網及び伝送網事業等とし、商号を「株式会社パワーコム」として設立されたが、設立と同時に商号登記を 完了し、電気通信回線設備の使用者である電気通信事業者を主顧客として同 目的事業を行ってきた。
判決内容
裁判所は、商号権の主張に関し、商法第23条第1項は、何人も不正な目的で他人の営業として誤認し得る商号を使用できないと規定しているところ、他 人の営業と誤認し得る商号とは、その他人の営業と同種営業に使用される商 号のみに限定されるわけではなく、ある商号が一般需要者をして営業主体を 誤認・混同させるおそれがあるかについて判断するに当たっては、両商号の全体を比較観察し、各営業の性質や内容、営業方法、需要者層等において互 いに密接な関連を有している場合であって、一般需要者が両業務の主体が互 いに関連があるものと考え、又はその他人の商号が顕著に広く知られていて需要者から企業の名声によって絶対的な信頼を獲得したケースに該当するか どうかを総合的に考慮すべきであるが、両社が供給する財貨と役務が互いに 異なる点、主たる顧客層も前者は電子製品の製造会社又は消費者である反 面、後者は電気通信事業者であって互いに異なる点、両社が資本金や資本金 や売上高の規模においても著しい差がある点等に照らし、被告会社が原告会 社の商号の同一・類似の商号を使用したとしても、一般需要者が被告会社の営業を原告会社の営業と誤認するおそれがないとした。 また、不正競争行為の主張に関し、原告会社の商号がその営業標識として国 内に広く認識されている点を立証するに足る証拠がないとした。更に逆混同 による信用毀損の主張に関し、商号を先に使用した者(先使用者)の商号と同 一・類似の商号を後に使用する者(後使用者)の営業規模が先使用者のより大 きく、その商号が周知性を獲得した場合、後使用者の商号使用によりあたか も先使用者が後使用者の名声又は消費者の信用に便乗して先使用者の商品の出所が後使用者であるかのごとく消費者を欺瞞するという誤解を受け、先使 用者の信用が毀損する等においては、これをいわゆる逆混同による被害と見て後使用者の先使用者に対する損害賠償責任を認める余地が全く無くはない と言えないが、商号を保護する商法と不正競争防止及び営業秘密保護に関す る法律の立法趣旨に照らし、先使用者の営業が後使用者の営業とその種類が 異なり、又は営業の性質や内容、営業方法、需要者層等において密接な関連 がない場合等においては、そのような逆混同による被害を認めることができ ないと判示した。
専門家からのアドバイス
既に登記されている他人の商号と同一又は類似の商号を使用する企業は、先 使用者の営業の性質や内容、営業方法、需要者層等に関する情報を事前に収 集、分析する必要があり、その分析結果に従って先使用者の営業の性質や内 容、営業方法、需要者層等とは異なる事業を行うことによって先使用者の営 業と混同を生じさせないようにすることが重要である。商号の使用を前後して大々的な広告を行うことによって、自社だけの独自のイメージを形成する 一方、自己の商号使用が先使用者の名声に便乗する意図でなされたものでな いという点を間接的に表せるようにする必要がある。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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