知財判例データベース 商品出所の誤認、混同可能性による商標登録無効事例
基本情報
- 区分
- 商標,審判
- 判断主体
- 特許法院
- 当事者
- 金ウンイ(原告)VS シャネル(被告、フランス法人)
- 事件番号
- 2002ホ4699登録無効(商)
- 言い渡し日
- 2002年11月15日
- 事件の経過
概要
31
被告は、原告の商標が周知著名な被告の商標及び商標の著名性に便乗する不正な目的で登録されたと主張し、特許審判院に原告の商標の登録無効審判を請求し、特許審判院は2002年6月28日に原告の商標が商標法第7条第1項第10号及び第11号に該当する商標であると判示し、原告の同商標登録を無効とする審決をした。これに対して原告は、原告の商標と被告の商標が外観上区別され、価格及び主消費者層が異なり、誤認、混同の可能性がないと主張し、特許審判院の審決を不服として特許法院に訴えを提起したが、特許法院は原告の請求を棄却した。
事実関係
1924年創立された被告シャネルは、国際的なトータルファッション分野の専門製造業者として国内外的に周知著名な商標及び商標の商標権者である。被告は商標(以下「引用商標1」)を各種かばん類を指定商品として1980年11月18日に商標登録番号第72785で、商標(以下「引用商標2」)を各種かばん類を指定商品として1995年3月13日商標登録番号第309448号で各々特許庁に登録し、同商標を使用して各種かばんを製作して高格でデパート等において販売している。一方、原告は商標(以下、「本件登録商標」)を各種かばん類を指定商品として1995年4月13日商標登録番号第311475号で登録して各種かばんを製造して低価で一般市場において販売している。これに対して被告は、本件登録商標は被告の引用商標1、2と外観が類似して指定商品と同一、類似するので商品出所の誤認、混同のおそれがあり、引用商標の著名性に不当便乗して不正な利益を得ようとする目的で出願して登録された商標であるので無効とされるべきであるという商標登録無効審判を特許審判院に請求した。
判決内容
本件登録商標と引用商標1は、英語アルファベット「C」の模様の図形二つが左右で交差して対称構造をなしている点で基本的枠組が同一であり、ただ、引用商標1は左右の両端に開いた部分の余白をそのまま生かしているのに反し、本件登録商標は開いた同部分を薄い直線で連結して余白をなくす一方、「C」の模様の図形二つが交差する地点を他の部分より明るく処理した点に差があるが、引用商標1が素材として選択した「C」の模様の図形二つが左右で交差する形状は構成自体は簡単であるが、それから受ける印象が非常に独特で、視覚的に標章の中央に位置した図形間の交差部位に視線を集中させる効果があるので、そのような素材と枠組がそのまま使用され、単に視線がそれほど行かない周辺部位等においてのみ若干の変化が与えられた本件登録商標においても引用商標と類似する印象を受けると言うべきで、全体的、客観的、離隔的に観察すると、両商標は類似する商標であると見るべきである。のみならず、両商標が全て各種かばん類を指定商品としていることを考慮すると、本件登録商標と引用商標1が類似する商品に同時に使用される場合、一般需要者に引用商標1の使用者やそれと特殊な関係にある者によって本件登録商標を使用する商品が生産又は販売されるものと認識されることがあり、商品の出所に関して誤認、混同を生じさせるおそれがあって、本件登録商標をその指定商品に使用する場合、その商品は引用商標1を使用する商品と同じ品質を持つ商品として一般需要者がその品質を誤認するおそれがあるので、本件登録商標は商標法第7条第1項第10号及び第11号に違反して登録された商標として商標法第71条第1項第1号により無効とされなければならない。
専門家からのアドバイス
著名商標の周知性に便乗する目的で著名商標と同一の形態に付加要素を付した商標を登録しておき、これを製品に使用するものの、販売者や消費者が希望する場合にその付加要素を容易に除去することによって著名商標と同一の商標が付された製品であるかのような外観を形成する間接的な侵害行為が盛んに行われたことがあるが、このような行為が不正競争行為として許されないというのが従来の韓国の裁判所の立場であった。本件で問題になった登録商標もそのような目的から出願、登録されたものと見られるところ、判決に明示的に表れてはいないが、商標の類似判断をするに当たってそのような不正競争の意図がある程度考慮の対象になり得ると見られるので、著名商標の保有者としては、登録商標の変形により著名商標と同一・類似なものとして使用する事例がある場合、そのような事例があることを示し得る資料を収集し、その登録商標の登録無効審判事件として提出することも積極的に考慮する必要がある。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、李(イ)、半田(いずれも日本語可)
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195