知財判例データベース 商品主体の混同行為について判示した事例

基本情報

区分
不正競争,商標
判断主体
ソウル地方法院 東部支院
当事者
金剛製靴株式会社(原告)VS 金ギョンオ(被告)
事件番号
2002カ合2148 標章使用禁止
言い渡し日
2002年11月07日
事件の経過
上訴

概要

28

各種靴類を指定商品とする標章の商標権者である原告は、被告が原告の商標と同一又は類似の標章を被告が生産する靴下製品に使用して販売したのに対し、被告の行為が商標権侵害及び不正競争行為に該当すると主張して、被告を相手取って同標章を靴下、手拭い、手袋、子供服及び下着シャツに使用してはならない旨の侵害行為の禁止及び予防請求をしたところ、裁判所は同標章を靴下、手拭い、手袋に使用することは禁止されるとし、原告の請求を一部認容した。

事実関係

原告は、1954年10月から金剛製靴産業社という商号で各種皮革製品、衣類、装身具等の製造、販売業を開始し、標章を付した靴、ハンドバッグ等を製造、販売してきた。原告は、標章を、各種履き物類を指定商品として1979年1月17日に商標登録第59638号で、各種かばん類を指定商品として1981年1月19日に商標登録第74374号で登録した(以下「本件標章」)。一方、被告は1969年4月3日に「金剛繊維」という商号で創業した後、靴下を製造、販売しながら標章を「衣服、靴下、手袋、下着、タオル」等を指定商品として1969年5月7日に商標登録第18032号で登録した後、その指定商品を「各種手袋、手拭い、靴下、子供服、下着シャツ」として1999年3月12日に商標権存続期間延長登録を完了したが、被告は自己の登録商標を使用せず、原告の本件標章と同一又は類似の標章を被告が生産する靴下のラベル、包装容器、宣伝広告物等に使用して製作した後、在来市場において低価で販売してきた。

判決内容

不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律(以下「不正競争防止法」)第2条第1号(イ)目において他人の商号・商標など他人の商品であることを表示する標識が「国内に広く認識された」という意味は、国内全域にわたってあらゆる人に周知となっていることを要するのではなく、国内の一定の地域、範囲内で取引者又は需要者間に知られている程度で足りると言うべきであり、いわゆる広く知られた商標であるのかどうかは、その使用期間、方法、態様、使用量、取引範囲等と商品取引の実情及び社会通念上、客観的に広く知られているかどうかが一応の基準になると言え、不正競争防止法第4条による差止請求において上記のとおりの周知性の具備の如何は事実審弁論終結当時を基準に判断しなければならないところ、原告会社の営業規模、製品の種類及び内訳、販売金額、広告及び広報活動の方法及び頻度、原告会社が本件標章を使用した期間及び使用態様等に照らしてみれば、本件弁論終結当時を基準とみるとき、原告会社の本件標章は原告の靴やかばん等の商品の出所を表示する商品の標識として国内の取引者又は需要者間において広く知られていると言うべきである。また、周知性を獲得した商品標識と同一又は類似の商品標識を使用して商品を生産、販売する場合、たとえその商品が周知性を獲得した商品標識の商品と異なる商品であってとしても、一企業が種々の異質な産業分野にわたって異なる様々な商品を生産、販売することが一般化された現代の産業構造に照らし、一般需要者としてはその商品の用途及び販売取引の状況等により周知性を獲得した商品標識の所有者やそれと特殊関係にある者によりその商品が生産、販売されるものと認識して商品の出所に混同を生じさせ得るので、不正競争防止法第2条第1号(イ)目所定の不正競争行為に該当すると言うべきである。したがって、靴やかばん等の商品に周知性を獲得した原告会社の本件標章と同一、類似の標章を被告が生産する靴下製品に付して使用しており、一方、その外に布製手拭い、各種手袋等に使用する可能性があるので、「靴、かばん」等の商品と「靴下、手拭い、手袋」等の商品は、その商品の用途及び販売取引の状況(最近になっていわゆる「トータルファッション」の品目として同一の売り場内で一緒に販売されている)等を考慮してみると、相互に経済的牽連関係にあると見られる。したがって、被告が原告の本件標章と同一、類似の標章を使用して「靴下、手拭い、手袋」等の製品を製造、販売する行為は不正競争防止法上の商品主体の混同行為に該当する行為であり、原告は被告を相手取ってその侵害行為の禁止及び予防を求めることができる。しかし「子供服及び下着シャツ」の場合には、原告の本件商標が使用された「靴、かばん」等の製品と経済的牽連関係があると見難く、不正競争行為に該当しない。また、不正競争防止法第2条第1号(イ)目所定の不正競争行為においては、不正競争防止法第2条第1号(ハ)目所定の不正競争行為とは異なり、不正競争行為者の「悪意」又は不正競争行為者の「不正競争の目的」など不正競争行為者の主観的意思をその要件としていないだけでなく、不正競争防止法上、善意の使用者の行為を不正競争行為から排除する明文の規定がないので、原告会社の本件標章が周知性を獲得した商品の標識となり、被告の上記標章が周知性を獲得した原告会社の本件標章と同一で、商品の出所に関する混同が生じる危険が存在する以上、被告の行為は不正競争防止法第2条第1号(イ)目所定の不正競争行為に該当する。

専門家からのアドバイス

本件において被告は、自分が本件標章が商標として登録される前から本件標章を靴下製品に使用してきた善意の先使用者であるので、自己の行為が不正競争行為に該当しない旨の主張をしたが、不正競争防止法第2条第1号(イ)目所定の不正競争行為においては「悪意」又は「不正競争の目的」など不正競争行為者の主観的意思をその要件としていないので、これは適当な抗弁とはなり得ない。被告としては自己の商標使用が登録商標権の行使であったとの主張をすることもあったであろうが、登録商標権の抗弁をしたとしても「登録商標の登録と使用が不正競争の目的でなされた場合には登録商標権の抗弁が許容されない」という趣旨の大法院判決に照らしてみるとき、そのような抗弁が受け入れられたであろう可能性もそれほど高くないものと見られる。

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