知財判例データベース 不正競争防止法違反の判断時期に関して判示した事例

基本情報

区分
商標,不正競争
判断主体
ソウル地方法院第12民事部
当事者
シャネル(原告)VS ジン・ソンボク外3人(被告)
事件番号
2002カ合6901 標章使用差止
言い渡し日
2002年12月06日
事件の経過
控訴(ソウル高等法院2003ナ4404)

概要

33

国内に広く知られている「CHANEL」及び[그림]商標の商標権者である原告が「JINCHANEL」、「JINCHANELPLUS」及び/又は[그림]商標と同一、類似に変形できるように製作された標章を商標又は商号として使用している被告を相手取って不正競争行為差止等を請求した事件において、裁判所は不正競争防止法等を根拠に原告の請求を認容した。

事実関係

1924年に創立された原告は、全世界的に広く知られた高級衣類及びハンドバック製造企業である。原告は、CHANEL文字標章及び書類鞄、ハンドバック、オペラバッグ等を指定商品として1980年8月26日にCHANEL文字[그림]商標を商標登録番号第73124号で、1980年11月18日に[그림]商標を商標登録番号第72785号で登録したのをはじめとし、「CHANEL」、「シャネル」及び商標を登録し、同標章は国内で原告の営業標識として広く知られている。被告ジン・ソンボクは、書類鞄、ハンドバック、オペラバッグ等を指定商品として2つの円形図形が重なっている形態を基本にした多様な形態の図形商標(下表参照)と「JINCHANELPLUS」及び「JINCHANEL」という文字商標を登録又は登録出願している。被告らは、ハンドバック等の製品を原告が製造した製品の形や色など特色のある部分を類似するように製作した後、被告ジン・ソンボクの商標のうち図形商標をハンドバック等の製品に使用するに当たって2つの重なった円形図形の両側一部をペンチ等で簡単に跡形なく取り外せるようにし、これを取り外せば、「C」文字形状の図形を互いに反対に交差させて対称になるように構成した部分だけが残り、原告の図形商標と同一、類似の標章に変形され得る方法で使用し(下表参照)、「JINCHANEL」又は「ジンシャネル」という商号で同ハンドバック製品を販売した。

一方、被告ジン・ソンボクは、原告との商標権紛争で損害賠償訴訟等が係属中であった1999年3月8日に原告との間に「原告の商標と同一、類似するように変形し、又は変形しやすい標章を製造、使用しない」ことを約定していた。

判決内容

裁判所は、原告の商標使用差止請求に関連し、被告ジン・ソンボクに対して原告との約定に基づいて原告の商標と同一若しくは類似し、又は同一若しくは類似するように変形することができる標章を使用しない義務を負担するので、原告との約定により被告が登録又は登録出願中である各標章を使用してはならず、各製品を廃棄する義務を負担すると判示した。特に、裁判所は、商標権侵害訴訟において侵害商標と被侵害商標の類否を判断するに当たっては、侵害行為の全過程を全体として観察しなければならないという前提の下に、被告が登録又は登録出願中である各図形商標を変形可能な方法で使用することは、原告標章と同一に変形されることを初めから予定し、その変形が簡単にできるよう使用したものと見るのが相当であり、被告らが変形可能な方法で各図形商標を使用した行為は、製品に同変形可能な形態の商標を付して取引先に供給する行為で完了したのではなく、取引先や消費者によって上記のような分離取外しが行われたときになってはじめて商標使用行為が完成すると見るべきであり、取引先や消費者による上記分離取外し行為は上記変形可能な商標を付した上記被告らの行為に帰属すると見るのが相当であると判示することにより、変形可能な商標を付した製品を販売する行為が不正競争行為に該当すると判示する一方、変形や分離できない形態で被告ジン・ソンボクの商標を使用することは混同を生じさせるおそれがないと判示した。

専門家からのアドバイス

従来から韓国の裁判所は他人の有名商標と類似するように変形可能な商標を使用する行為を不正競争行為と判断してきたが、その法理は未だ明確に定立されていなかった。この判決は、当該商標の分離や変形が予定されており、分離や変形により有名商標と混同を生じさせるおそれのある場合、不正競争行為の判断の対象になる商標使用の判断時点が、製品が販売された以後まで拡張され得るという点を法理的に明確に説示した点においてその意味があると言える。今後、上級審判決の推移を見守る必要がある。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、李(イ)、半田(いずれも日本語可)
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195