知財判例データベース 自由発明とみなす職務発明に関して判示した事例
基本情報
- 区分
- 職務発明,特許
- 判断主体
- ソウル地方法院南部支院
- 当事者
- チェ・インチョル他1人(申請人)VS 三星電子株式会社(被申請人)
- 事件番号
- 2002カ合872 特許権実施及び処分禁
- 言い渡し日
- 2002年06月24日
- 事件の経過
概要
11
申請人は1994年10月13日に被申請人の新商品開発部署に勤務しながら考案した「文字入力コード発生装置及び方法」に関する発明について職務発明申告をし、被申請人は1995年5月11日に本件発明に関する特許を出願、登録して1998年から同特許を実施した製品を生産、販売し同特許と関連した各種契約を締結した。これに対して申請人は、被申請人が本件発明に関する権利を継承した後、4ヶ月以内に特許出願をしなかったので、本件発明は発明振興法第11条により自由発明(会社の業務と関係のない発明)に該当すると主張し、被申請人を相手取って同発明を実施した製品の生産、販売禁止及び同特許の処分禁止を求める仮処分を提起したが、裁判所は申請人の請求を棄却した。
事実関係
申請人は被申請人の情報通信部での新商品開発チームに勤務しながらチョンジイン(天地人)文字入力方式と呼ばれる文字入力コード発生装置及び方法に関する発明をし、1994年10月13日に同発明に関して特許を受ける権利を被申請人に譲渡するという内容の職務発明申告をし、被申請人は1995年5月11日に同発明に関する特許を出願して1998年に登録を終えた後、1998年末から同発明を実施した移動電話端末機を生産して販売していた。これに対して申請人は、申請人が錯誤により行った職務発明申告を被申請人が悪用して特許登録を終えたものであり、また、被申請人は本件特許を申請人から譲り受けた日から7ヶ月が経過した後に特許出願したので、発明に関する権利を継承した後4ヶ月以内に特許出願をしない場合に自由発明と見なす発明振興法第11条により本件発明は自由発明と見なす職務発明に該当し、自由発明とみなす職務発明である場合、従業員の使用許諾があってこそ使用者が通常使用権を持つことができるという同条第2項の規定に照らし、申請人が使用許諾をしていない本件特許は被申請人が正当な権利者となり得ないと主張した。
判決内容
本件発明は、被申請人が生産する移動電話端末機に利用される文字入力方式に関する発明であって被申請人の業務範囲に属すると言うべきであり、本件発明をした当時、申請人らの職務は情報通信部門の新商品開発のためのアイディア創出であったので、同発明は申請人らの職務に属するので、本件発明は職務発明に該当すると判示した。また、被申請人が申請人らからこれを譲り受け、申請人らの異議のない状態で本件特許権を登録したので、仮りにその登録日が継承した日から4ヶ月を経過したとしても被申請人はその特許権者として適法に本件発明を実施する権利があり、申請人らに被申請人を相手取って同特許権移転登録請求権等があると見ることも困難で、したがって、申請人らとしては本件発明の発明者の地位を主張し、被申請人を相手取って本件申請の趣旨のとおりの決定を求めることはできないと判示した。
専門家からのアドバイス
発明をするようになった行為が従業員の現在または過去の職務に属する職務発明の場合、全ての権利が当該従業員等に原始的に帰属し、使用者等は無償の通常実施権だけを有するようになるが(特許法第39条)、職務発明に対して使用者等が当該職務発明に関する権利を継承した後4ヶ月以内に出願をしなかったり、書面で出願を放棄した場合、当該職務発明は自由発明と見なされるので、企業は職務発明に関して迅速にその価値等を評価するシステムを開発する必要があり、その評価結果、特許を受ける価値があるものと確認できた場合には、特許を受ける権利の継承後4ヶ月以内に特許出願をする必要がある。
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