知財判例データベース 転職禁止期間の起算点と不正競争防止法により保護される営業秘密の時間的範囲について判示した事例
基本情報
- 区分
- その他
- 判断主体
- 水原地方法院城南支院
- 当事者
- 三星電子株式会社(申請人)VS 李ソンギュ(被申請人)
- 事件番号
- 2001カ合428 転業禁止等仮処分
- 言い渡し日
- 2002年05月08日
- 事件の経過
概要
7
申請人は、申請人会社の移動通信端末機の開発業務を担当していたところ競争会社であるペンテックに第1次の転職をしたが復職し、1年足らずで再度ペンテックに第2次の転職をした被申請人に対して第2次の転職日から3年間の転業禁止、営業秘密公開禁止等を求める仮処分を裁判所に提起したが、裁判所は申請人の請求を棄却した。
事実関係
被申請人は1977年に申請人会社に入社した後、移動通信端末機の開発を担当してきたが、2000年3月29日に申請人会社を退社した後、2000年6月1日に申請人会社と移動通信端末機市場で競争関係にあるペンテックに第1次の転職をした。これに対し、申請人会社が被申請人を相手取ってペンテックへの転業禁止及び営業秘密侵害禁止を求める仮処分申請をしたところ、2000年7月に被申請人は申請人会社と合意して同仮処分申請を取り下げて申請人会社に復帰した。しかし、復職後の1年間の米国研修期間終了後も従前の無線移動通信の開発業務と関連のない分野で勤務するようになり、被申請人は2001年9月にペンテックに第2次の転職をして移動通信端末機関連業務を総括した。
判決内容
裁判所は、申請人会社と被申請人間に具体的な転職禁止の約定の存在が認定できない場合、勤労者に対する転職禁止申請は憲法上保障された勤労者の職業選択の自由を制限する側面があるので、不正競争防止法上の規定だけを根拠にして被申請人に対するペンテックへの転職禁止を求めることができず、転職禁止を求めることができるとしても、営業秘密保護誓約書、特別のインセンティブ支払約定書等を徴求するに当たって転職禁止期間を退職後から1年間と定めた点と、無線端末機技術の急速な発展速度から見て1年の転職禁止期間であれば、営業秘密保護という目的を達成できるとした上で、被申請人が2000年3月29日に申請人会社に辞意を表明した後ペンテックに転業するまで申請人会社の研究開発業務から離れていただけでなく、米国研修期間中の研修内容も被申請人が申請人会社で従事していた業務内容とは関連がなかったことに鑑み、被申請人がペンテックに第2次の転職をした2001年9月でなく被申請人が実際に申請人会社での研究開発業務から離れた2000年3月29日から起算するのが相当とであるし、被申請人がペンテックに第2次の転職をした2001年9月には起算日から1年が経過して転職禁止期間が経過したので、転職禁止を求めることができないと判示した。また、営業秘密の保護期間に関連し、営業秘密が不正競争防止法により保護される時間的範囲は、侵害行為が侵害行為によって公正な競争者より有利な出発、時間節約という不当な利益を取ることができないようにし、公正かつ自由な競争を保護するために必要な時間的範囲内に制限されなければならないので、営業秘密の使用又は公開禁止期間も被申請人の転職禁止期間と同一の2000年3月29日から1年と判断した。
専門家からのアドバイス
会社は営業秘密に接近可能な職員と営業秘密保持に関する契約を締結する必要があり、この場合、必ず転職禁止約定も締結しておくべきである。裁判所は、これらが憲法上保障された職業選択の自由を過度に制限しないようその解釈と有効性の判断に厳格な基準を定める傾向を見せてはいるが(具体的に見れば、営業秘密保持約定に関しては、対象となる営業秘密を特定していない場合には、その約定自体が無効であると判断するか、その義務の存続期間を制限する傾向があり、転職禁止約定に関しては、その期間を厳格に短期に制限している)、営業秘密を保護しようとする会社としては、これらの期間を合理的な範囲内で出来れば長く定めるものの、業務の性格によって転職禁止義務の存続期間を営業秘密保持義務の期間より短く定めておく等の方法を使用する場合、裁判所からそのような約定の合理性を認められる可能性が高まるものと見られる。
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