知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)韓国知財2022年十大ニュース

2023年01月11日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.172)
ジェトロ・ソウル 副所長 土谷 慎吾(特許庁出向者)

新年明けましておめでとうございます。今年も本欄をよろしくお願いいたします。筆者は毎年年末にその年の韓国の知財関連ニュースを振り返り、韓国知財十大ニュースを選定することを習わしとしています。
2022年はどのようなニュースがあったのか、ご一緒にカウントダウン形式で振り返ってみましょう。

1.韓国知財2022年十大ニュース

第10位:韓国の産業財産権出願は踊り場に
韓国における産業財産権出願件数は、2019年に初めて合計50万件を超え、2020年には55万件を超え、2021年には60万件に迫る伸びとなりました。しかし、2022年については、本稿執筆時点でまだ統計値が出ていないものの一転して減少に転じており、2022年通年では2020年の水準に近い数字になりそうです。

第9位:続・人工知能はエジソンになれるのか?
韓国特許庁は、2022 年3月23 日、「人工知能(AI)と知識財産白書」と題する白書を発行し、これまでの議論の論点整理を行うとともに、今後の制度改正の見通しをまとめました。結論としては現時点での法改正は時期尚早であり、今回は論点整理に留まりました。

第8位:商標審査期間が長期化
韓国では商標の一次審査期間の延びが問題になっており、2016年に4.8か月、2020年に8.9か月だった一次審査期間が、報道によれば、2022年5月には14.8か月とかなり長期化が進んでいます。

第7位:韓国型証拠収集制度(K―ディスカバリー)の導入
韓国国会に、ドイツの査察制度、日本の査証制度を参考にした法案が提出されていますが、本稿執筆時点でまだ国会を通過しておらず、調整が続いています。

第6位:審判請求期間、再審査請求期間の延長
改正特許法、デザイン保護法(日本の意匠法に当たる)、商標法が、2022年4月20日に施行され、審判請求期間、再審査請求期間が3か月に延長されました。

第5位:第3次知識財産基本計画、第1次不正競争防止および営業秘密保護基本計画の策定
厳密には2022年のニュースではありませんが、2021年末、標記2本の5か年計画が策定・公表されました。弊所ウェブサイトで仮訳を提供しています。

第4位:政権交代による知財政策への影響は?
2022年5月3日、「尹錫悦政府の110大国政課題」が発表され、秘密特許制度の導入、技術奪取防止等海外知的財産紛争支援の強化、AI・ビッグデータ技術を活用した特許行政イノベーションの推進が掲げられました。

第3位:韓国特許庁、政権交代後初の知的財産分野総合計画を発表
2022年8月18日、韓国特許庁は新政権発足後初めてとなる知的財産分野総合計画「ダイナミックな経済の実現に向けた知的財産の政策方向」を発表しました。

第2位:韓国への特許出願件数、日本は2位に低下
外国から韓国への特許出願件数は、長年日本が首位をキープしてきましたが、2021年に初めて米国に首位を明け渡し、2位に低下しました。

第1位:韓国特許庁に初の民間出身女性庁長が就任
2022年5月31日、韓国特許庁の第28代目庁長として、初の民間出身、初の女性庁長となる仁實(イ・インシル)庁長が就任しました。

2.韓国人が選んだ十大ニュースは?

2022年12月28日、韓国特許庁は、韓国国民とジャーナリストの投票に基づく2022年十大ニュースを発表しました。これによると、1位は「人工知能は発明者になれない」ということです。
筆者の十大ニュースと比較すると、日本人から見た視点と韓国人あるいは韓国政府から見た視点との違いが分かって興味深いところです。2位から10位が気になる方は、是非以下リンクから、あるいは「韓国特許庁、2022年10大ニュースを選定」で検索し、ご覧ください。

韓国特許庁、2022年10大ニュースを選定…1位は「人工知能は発明者になれない」

今月の解説者

日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所
副所長 土谷 慎吾
2001年日本国特許庁入庁。通信・半導体分野の審査官・審判官、情報技術統括室室長補佐、審判課課長補佐、主任上席審査官等を経て、2020年7月から現職

どうなる韓国 新・知財最前線は今

本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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