ビジネス関連法 非居住者が租税協定に定める待遇を享受することに関する管理弁法(試行)

2009年8月7日作成

【法令名称】
非居住者が租税協定に定める待遇を享受することに関する管理弁法(試行)
【発布機関】
国家税務総局
【発布番号】
国税発〔2009〕124号
【発布日】
2009年8月24日
【施行日】
2009年10月1日

趣旨と目的

非居住者(非居住者企業と非居住者個人を含む。以下同じ)が租税協定に定める待遇を享受することに関する管理業務を規範化し、強化する(第一条)。

内容のまとめ

本弁法は、総則、審査認可申請と届出報告、審査認可と執行、後続の管理、法的責任、附則から構成され、合計で六章、四十五条からなる。主な内容は以下の通りである。

適用範囲
  • 中国において納税義務が生じる非居住者が租税協定待遇(租税協定に従い、国内租税法律規定に基づき履行しなければならない納税義務を減軽、又は免除できることをいう)を享受する必要がある場合、本弁法を適用する。租税協定国際運輸条項に定める待遇を除く(第二条)。
審査認可申請と届出報告
  • 非居住者が租税協定待遇を享受する必要がある場合、本弁法の規定に従い審査認可又は届出手続を行わなければならない。審査認可又は届出手続を行わなかった場合、関係する租税協定待遇を享受してはならない(第三条)。
  • 非居住者は下記の租税協定条項に定める租税協定待遇を享受する必要がある場合、審査認可の権限を有する税務機関に審査認可申請を提出しなければならない(第七条)。
    • 租税協定における配当金条項
    • 租税協定における利息条項
    • 租税協定における特許権使用料条項
    • 租税協定における財産収益条項
  • 非居住者が下記の租税協定条項に定める租税協定待遇を享受する必要がある場合、納税義務が発生する前、又は関係する納税義務を申告する際に、納税者又は源泉徴収義務者は主管税務機関に届出なければならない(第十一条)。
    • 租税協定における恒久的施設及び営業利益条項
    • 租税協定における独立個人の役務条項
    • 租税協定における非独立個人の役務条項
    • 上述の三項及び本弁法第七条に列挙した租税協定条項(上記の通り)以外のその他租税協定条項
申請手続き (後述)
事後に取り扱う手続(第二十一条)
  • 中国において納税義務が生じた非居住者は租税協定待遇を享受できるにもかかわらず、それを享受せず、かつ享受できるべきであった当該租税協定待遇を享受しないことにより、税金を過大納付した場合、当該過大納付した税金を清算する日から3年間以内において、主管税務機関に租税協定待遇の遡及的享受を申請することができる。
  • 本弁法の規定に従い届出手続又は審査認可手続を行い、かつ主管税務機関の許可を経た上、租税協定待遇を遡及的に享受し、過大納付した税金の還付を受けることができる。
  • 前述の期間を超過した場合、主管税務機関はその申請を受理しない。
後続の監督、管理
  • 税務機関は、租税協定執行リスクに基づき、非居住者が既に享受している租税協定待遇(届出類と審査認可類を含む)から、毎年定期的に又は不定期的にランダムに一定数量のサンプルを抽出して、審査、照合又は再検査を行う(第二十四条)。
遡及力(第四十五条)
  • 租税協定待遇を享受する必要のある納税義務が、2009年10月1日(当日を含む)以降に発生した場合、全て本弁法に従い執行する。
  • 2009年10月1日以前に発生した納税義務が、2009年10月1日以降に租税協定待遇を遡及的に享受する必要がある場合も、本弁法の規定に従い執行するものとする。

非居住者企業が租税協定待遇享受に関する手続を取り扱う時の基本的な流れ。

審査認可申請(第九条)

非居住者納税者が主管税務機関又は審査認可の権限を有する税務機関(※1)に申請を提出する。提出しなければならない資料は下記の通り。

  1. 非居住者租税協定待遇享受審査認可申請表
  2. 非居住者租税協定待遇享受身分情報報告表
  3. 租税協定を締結した相手方の主管当局が前年度(西暦)開始以降に発行した納税居住者身分証明書
  4. 取得した関連所得に関係する財産権利証、契約書、協議書、支払証憑等の権利証明、又は仲介機構、公証機構が発行した関係証明
  5. 税務機関が提供を要求した租税協定待遇享受に関係するその他の資料

届出報告(第十二条)

非居住者納税者又は源泉徴収義務者が主管税務機関に提出する。提出しなければならない資料は下記の通り。

  1. 非居住者租税協定待遇享受届出報告表
  2. 租税協定を締結した相手方の主管当局が前年度(西暦)開始以降に発行した納税居住者身分証明書
  3. 税務機関が提供を要求した租税協定待遇享受に関係するその他の資料

審査認可の決定(第十六条)

審査認可の権限を有する税務機関は、規定する期間(※2)内に審査認可の決定又は受理しない決定を出し、かつ書面にて審査認可の結果を申請人に通知しなければならない(規定する期間内に書面にて審査認可結果を申請人に通知しない場合、すでに非居住者の租税協定待遇享受を許可する決定を出したと見なす)。

執行状況の報告(第十八条)

納税者又は源泉徴収義務者は納税申告を行う際に、審査認可の決定に従い執行できる。但し、「非居住者租税協定待遇享受執行状況報告表」を記入し、主管税務機関に実際の執行状況を報告しなければならない。

後続保管等の義務(第二十二条)

資料の保管:納税者又は源泉徴収義務者はすでに関係租税協定待遇を享受、又は執行した場合、非居住者の租税協定待遇享受に関わる証憑、資料を取得、かつ保管しなければならず、保管する期間は、10年を下回ってはならない。

※1, 審査認可の権限を有する税務機関は、省級税務機関が現地の機関の設置状況、人員配置及び作業量等の実際状況に基づき確定した後、速やかに公布し、かつ国家税務総局に届ける。
※2, 審査認可の期間は、審査認可機関の階級によって、それぞれ20業務日(県、区級及びその下)、30業務日(地区、市級)、40業務日(省級)と分ける。内部における認可手続を経た上、10業務日を延長することができる。但し、期間延長の理由を申請人に告知しなければならない。

日系企業への影響

非居住者の中国における租税協定待遇享受につき、今までの中国法律には既に関係する規定が存在しているが、完備性、具体性に欠けるところがあった。今回、本弁法が公布されたことにより、非居住者の租税協定待遇享受に関する具体的な手続の取扱等がより具体化され、実務操作上の手引きとすることができる。

そのため、中国国内税法に基づき、納税義務を履行しなければならない日本国企業又は個人(或いはその源泉徴収義務者)は、規定する条件に合致している場合、本弁法の規定に従い、非居住者租税協定待遇享受の審査認可又は届出手続を行うことができ、中国政府と日本政府が締結済みの現行有効な租税協定(「所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための中華人民共和国政府と日本国政府との間の協定」等)に定める納税義務の減軽又は免除に関する待遇を享受することができる。

参考資料

※本資料はジェトロが里兆法律事務所に委託して作成しました。ジェトロは同事務所の許諾を得て本ウェブサイトに掲載しています。
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