ビジネス関連法 「中国滞在183日基準」について

2003年12月31日作成

ここではいわゆる「183日基準」について述べます。ただ、中国での個人所得税の問題は解釈上明確でないこと、各地税務局等の取扱いが異なっていることが多々あり、また中国での勤務状況も様々なパターンがあることから、独自で明確に判断することが難しいのが現状です。具体的には、個別に専門家、当局等に確認されることをお奨めします。

1. 日中租税条約における短期滞在規定

日中租税条約第15条には以下の内容が規定されています。なお、文中の下線部分は条文、カッコ内は日本人が中国で働く場合を前提にしての筆者の注釈です。

一方の締約国(日本)の居住者が他方の締約国内(中国内)において行う勤務について取得する報酬に対しては、次のAからCまでに掲げることを条件として、当該一方の締約国(日本)においてのみ租税を課することができる。

  1. 報酬の受領者が当該年(1月から12月)を通じて合計183日を超えない期間当該他方の締約国内(中国内)に滞在すること。
    (つまり、暦年で183日を超えて中国に滞在しないこと。例えば9月から翌年4月までの滞在であれば暦年で183日を超えたことにはならない)
  2. 報酬が当該他方の締約国内(中国内)の居住者でない雇用者またはこれに代わる者から支われるものであること。
    (つまり、中国の企業等ではない、外国の企業等から報酬が支払われること)
  3. 報酬が雇用者の当該他方の締約国内(中国内)に有する恒久的施設または固定的施設によって負担されるものでないこと。
    (「恒久的施設等」は難しい概念であるため、ここでは解説を省略しますが、中国内にある会社、事務所、支店等では実際に報酬等を支給せず外国の会社等が報酬を支給していたとしても、技術料等によって報酬見合分を中国内の事務所等が外国企業等に支払っている場合等、中国内の事務所等が実質報酬を負担していると見做される場合はこれに抵触することとなる)

(注1) 日本の居住者*で中国に滞在する者が、上記AからC全てに該当する場合には中国での個人所得税は課されないことになりますが、それ以外は中国勤務日数分課税対象になります。

(注2) この規定は一方の締約国(日本)の居住者*であることを前提にした規定であり、一方の締約国(日本)の居住者*でなくなっていればこの183日基準の適用はありません。

* 日中租税条約での居住者

  • 「一方の締約国の居住者」とは、当該一方の締約国の法令の下において、住所、居所、本店または主たる事務所の所在地その他これらに類する基準により当該一方の締約国において課税を受けるべきものとされる者をいう。
    (従い、中国現法への出向等により日本の住所を抜いて中国へ赴任している場合、日本で課税されていない場合は「一方の締約国(日本)の居住者」とはならないものと思われます)
  • 1の規定により双方の締約国の居住者に該当する個人については、両締約国の権限のある当局は、合意によりこの協定の適用上その個人が居住者であると見做される締約国を決定する。

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