ビジネス関連法 国有土地上家屋収用及び補償条例

2011年2月1日作成

【法令名称】
国有土地上家屋収用及び補償条例
【発布機関】
国務院
【発布番号】
国務院令第590号
【発布日】
2011年1月21日
【施行日】
2011年1月21日

主旨と目的

国有土地上家屋の収用と補償活動を規範化し、公共利益を擁護し、収用対象家屋の所有権者の適法的権益を保障する(第一条)。

内容のまとめ

国有土地上の法人(外商投資企業を含む)、個人所有の家屋を、公共利益の需要のために収用する必要がある場合、その収用及び補償については本条例の規定が適用される。本条例によると下記の通りである。

収用及び補償の主体
  • 市、県級政府(以下「政府」という)は本管轄区の家屋収用と補償作業に責任を負う(第四条)。
  • 政府が確定した家屋収用部門(以下「家屋収用部門」という)が組織して本行政区域の家屋収用と補償作業を実施する(第四条)。
  • 家屋収用部門は家屋収用実施法人に委託して家屋収用と補償の具体的作業にあたらせることができる(第五条)。
収用範囲 公共利益の需要のためである場合に、収用できる。公共利益には下記の内容が含まれる(第八条):
  • 国防及び外交の需要。
  • 政府が組織し実施するエネルギー、交通、水利等インフラ施設建設の需要。
  • 政府が組織し実施する科学技術、教育、文化、衛生、体育、環境及び資源保護、防災減災、文物保護、社会福利、市政公用等の公共事業の需要。
  • 政府が組織し実施する保障性住宅工事建設の需要。
  • 政府が都市農村計画法の係る規定に基づき組織し実施する危険家屋が集中し、インフラ施設が老朽化している等の地域に対する旧都市区改築の需要。
  • 法律、行政法規規定のその他公共利益の需要。
  • 確かに収用家屋の各建設活動が必要な場合、国民経済と社会発展計画、土地利用全体計画、都市農村計画及び個別計画に適合しなければならない(第九条)。
収用対象者に対する補償 収用対象者が受けることのできる補償は次の通りである(第十七条、第十九条):
  • 収用対象家屋価値の補償。
    (家屋収用決定の公告日の収用対象家屋に類似する不動産の市場価格を下回ってはならない)
  • 家屋収用により発生した立退き、臨時配置の補償。
  • 家屋収用により発生した生産、営業停止に伴なう損害の補償。
  • 補助及び奨励。
収用手続き 収用補償方案の意見募集:
  • 収用補償方案は公布し、公衆の意見を募集し且つ意見募集情況及び公衆の意見に基づき修正した情況を速やかに公表しなければならない(第十条、第十一条)。
  • 政府は家屋収用を決定後速やかに公告しなければならない(収用補償案等を明記する)。収用対象者が家屋収用決定に不服である場合、行政不服再審査を申し立てることができ、又行政訴訟を提起することもできる(第十三条、第十四条)。
補償協議書の締結:
  • 家屋収用部門と収用対象者は補償方式、補償金額及び支払期間、財産権交換に供する家屋の場所、面積、立ち退き料、臨時配置費用又は仮住宅、生産営業停止に伴なう損害、立退き期間、移行方式、移行期間等の事項について補償協議書を締結する(第二十五条)。
  • 収用補償案にて確定した締結期間内に補償協議書を締結しない、又は収用対象家屋所有権者が不明である場合、家屋収用部門が、政府が収用補償案に基づき補償決定を行い、且つ家屋収用範囲内にて公告を行うよう要請する(第二十六条)。
  • 収用対象者が補償決定に不服である場合、行政不服再審査を申し立てることができ、又行政訴訟を提起することもできる(第二十六条)。
  • 家屋収用を実施するにあたっては、先ず補償してから立退きを行わなければならない(第二十七条)。
行政強制立退きの廃止
  • 収用対象者が法定期間内に行政不服再審査を申し立てない又は行政訴訟を提起せず、補償決定規定の期間内に立退きしない場合、政府が裁判所に強制執行を申し立てる(第二十八条)。
  • 如何なる法人及び個人も暴力、威嚇を実施する又は規定に違反して給水、熱供給、ガス供給、電力供給及び道路通行を中断する等の不法方式により収用対象者の立退きを強制してはならない。建設業者が立退き活動に関与することを禁止する(第二十七条)。

日系企業への影響

先頃、中国では家屋収用に伴なう補償、行政強制立退き等が原因で各地で事件(例えば、「収用に抗議する者による焼身自殺」、「立退き対象者の死亡」等)が相次いで発生し、社会的に大きな影響をもたらしている。このため、国務院は本条例を発布し、国有土地上家屋の収用及び補償について個別に定めている。

国有土地上の法人(日系企業を含む)が所有する家屋を、公共利益のために収用する場合、その収用及び補償については本条例の規定が適用される。本条例を従来の「都市家屋立退き管理条例」(本条例によって廃止されている)と比較すると、その特に目立つ変化は下記の通りである。

  • 政府が収用及び補償の主体であることを明確にするとともに、家屋収用と補償の具体的な作業を行う法人は営利を目的としてはならない旨を定めている。
  • 公共利益の範囲を厳格に画定している。公共利益以外の目的での収用を禁止している。
  • 収用対象者に対する補償を保障している。収用対象家屋価値の補償は、家屋収用決定の公告日の収用対象家屋に類似する不動産の市場価格を下回ってはならない。
  • 収用手続きにおいて公衆の参与を重要視している(収用補償方案について公衆の意見を募集する等)。
  • 行政強制立退きを廃止している(司法強制立退きに修正)。

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