ビジネス関連法

中華人民共和国社会保険法

2010年11月18日作成

【法令名称】
中華人民共和国社会保険法
【発布機関】
全国人民代表大会常務委員会
【発布番号】
主席令第三十五号
【発布日】
2010年10月28日
【施行日】
2011年7月1日

主旨と目的

社会保険関係を規範化し、公民が社会保険に加入し社会保険待遇を享受する適法的権益を擁護する(第一条)。

内容のまとめ

本法は基本養老保険、基本医療保険、労災保険、失業保険、生育保険、及びこれら社会保険料の徴収納付、社会保険基金、社会保険取扱及び監督、法的責任等について定めている。

本法によると、中国国内の従業員は社会保険加入義務があり(都市出稼ぎ労働者である農村住民及び和中国国内で就業する外国人を含む【第九十五条、第九十七条】)、雇用主及び従業員は法により社会保険料を納付しなければならない。下記の通り簡潔に説明する(第四条、第十条、第二十三条、第三十三条、第四十四条、第五十三条)。

社会保険項目 雇用主負担 従業員負担
基本養老保険
基本医療保険
労災保険 ×
失業保険
生育保険 ×

本法によると、雇用主は法により社会保険登記を行い、自己申告し、期日通りに社会保険料を全額納付する義務があり、規定に基づき係る行政措置を講じ及び法的責任を負うことになっている。下記の通り簡潔に説明する。

雇用主が社会保険登記を行う
係る規定
(第五十七条)
雇用主は 設立日より30日以内に営業許可証、登記証書又は会社の公印をもって、当地の社会保険取扱機関にて社会保険登記を行わなければならない。
係る規定
(第五十八条)
  • 雇用主は雇用日より30日以内に、その従業員のために、社会保険取扱機関に申請し、社会保険登記を行わなければならない。
  • 社会保険登記を行っていない場合、社会保険取扱機関がその納付すべき社会保険料を査定する。
法的責任
(第八十四条)
  • 雇用主が社会保険登記を行わなかった場合、社会保険行政部門は期限付きの是正を命じる。
  • 期限を過ぎても是正しなかった場合、雇用主を、納付すべき社会保険料金額の1倍以上3倍以下の罰金に処し、それに直接に責任を負う主管人員及びその他直接の責任者を500元以上3000元以下の罰金に処する。
自己申告し、期日通りに全額納付し、源泉徴収する
係る規定
(第六十条)
  • 雇用主が自己申告し、期日通りに社会保険料を全額納付しなければならず、不可抗力等の法定事由を除き、延期したり、減免してはならない。
  • 従業員が納付すべき社会保険料は雇用主が源泉徴収し、雇用主が毎月、社会保険料納付の詳細情況を本人に告知しなければならない。
従業員監督
(第四条)
個人は法により、社会保険待遇を享受し、本企業による納付情況を監督する権利を有する。
行政措置
(第六十二条、第六十三条)

雇用主が規定に基づき、納付すべき社会保険料金額を申告していない場合、当該企業の前月の納付額の110%で、納付すべき金額を確定しなければならない。

  • 雇用主が期日通りに、社会保険料を全額納付していない場合、社会保険料徴収機関が期限付きで、納付又は補足するよう命じる。
  • 期限を過ぎても社会保険料を納付していない又は社会保険料を補足していない場合、社会保険料徴収機関は預金口座の照会、口座開設銀行等への割当の通知、担保を提供し、納付延期協議書を締結するよう求める、ひいては裁判所に押収、差押え、競売を申し立てる等の措置を講じることができる。
法的責任
(第八十六条)
  • 雇用主が期日通りに社会保険料を全額納付していない場合、社会保険料徴収機関は期限付きで納付又は補足するよう命じ、且つ滞納日より、1日につき、1万分の5の滞納金を追徴する。
  • 期限を過ぎても納付しない場合、係る行政部門は滞納金額の1倍以上3倍以下の罰金に処する。

日系企業への影響

本法は中国国内の雇用主(日系企業を含む)及び個人(中国国内で就業する外国人を含む)に適用される。本法によれば下記の通りである。

  • 雇用主は法により社会保険登記を行い、従業員のために社会保険登記を行い、自己申告し、期日通りに社会保険料等の全額納付、及び源泉徴収をする義務がある。
  • 中国国内で就業する外国人も、本法の規定を準用して社会保険に加入する。ここでいう「準用」とは、本法の規定により社会保険に加入できる、又は本法の規定によらずに社会保険に加入しないこともできるという意味にもよみ取れる。実際、どのように取扱うかは、今後出される実施細則によると思われる。

本法は中国社会保障制度の基本法であり、中国社会保険分野における初めての総合的な法律でもある。本法の発表により、中国の社会保険制度が試験的段階から、確固たる、安定した、持続可能な発展段階に向かっていることの表れであると言える。

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