有限会社藤川工芸

木のぬくもりと癒し。創作こけしで世界にたくさんの笑顔を

群馬県赤城村に位置する工房で創作こけしの制作と販売を行う有限会社藤川工芸。地域の豊かな自然と文化を大切にするこころを活かし、オリジナルデザインの創作こけしをつくっている。2022年度のTAKUMI NEXT事業に採択され、米国のバイヤーとの取引に成功。

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展開国・地域:
米国
取扱製品:
創作こけし

代表取締役藤川氏(左)、営業担当萩原氏(右)

コロナ禍でのインバウンド減少をきっかけに海外展開へ

もともとインバウンド向けのお土産需要が中心でしたが、コロナ禍で海外からの観光客減少に伴い法人のお客様が減ったのをきっかけに、海外展開を視野に入れるようになりました。海外取引に関してジェトロ群馬へ初めて相談に行った際に TAKUMI NEXT事業をご紹介いただき応募したところ、2021年度は不採択でしたが、1年間グローバルビジネス実践塾などに参加した後の 2022年度に採択されました。商談をした米国のバイヤーとは2023年1月に商談をし、4月に発注をいただくことができました。サンプルを送り、商談ではTAKUMIに登録していた数千円ほどの価格帯のお土産こけしを中心に説明したところ、先方がホームページを見て数十万円ほどする一品もののアートこけしにも関心を持ってくださりました。結果的に、商談で説明したものに加えて、アートこけしも複数個購入いただき、先方のイベントで展示いただくことができました。ジェトロ群馬のオンライン商談会でつながったバイヤーと半年に一回のペースで少量の取引はしていますが、一度にここまで高額のオーダーをいただいたバイヤーは初めてでした。

「ほほえみ」
発売から30年以上たつ、ベストセラーのひとつ。手ごろな価格とちょうど良いサイズは、国内外を問わず、多くの方々に人気。

実践を通じて課題を特定、新たな商機を見出す

アートこけしは職人が一つ一つ手作りしており非常に高価なため、ファンに個人的に売ることはあっても、一般向けの販売は行っていませんでした。今回の商談で思わぬ需要を知り、アメリカの富裕層向けに販売するという新たな市場の可能性を見出すことができました。ただ、このような一品ものを販売するのは初めてだったため、相場観がわからず、値付けについては課題が残りました。これまではこけしをつくった職人が金額を決めていましたが、国内販売を想定した価格以外はつけたことがなく、金額設定の基準がありませんでした。また、群馬はこけしの生産量が多く、日用品に近い感覚で全国へお土産品として出しているため、業界としても価格勝負の風潮が強く残っています。今回の取引をきっかけに明確な基準を設けた方がいいことに気付き、商品のクオリティに応じたランク付けを現在進めています。
また、実際に梱包をしてみて必要な緩衝材の量やどのぐらいの手間がかかるのかを知ることができました。TAKUMI NEXTのメンターの方も話していましたが、受け取る側の視点から、送り方やパッケージも含めての商品価値を検討していく必要があることを実感しました。

「萌木」
創作こけし作家藤川正衛作。内閣総理大臣賞受賞。

良いものをつくるだけでなく、その良さをしっかりと伝える

これまではほとんどの取引が問屋さん経由の卸販売だったため、購入してくださるお客さんの声を聞く機会はなかなかありませんでした。TAKUMI NEXTではシンガポールでのポップアップにも参加し、来場した現地のお客さんから「もう少し高くても売れそう」という声をいただいたので、商品にもう少し自信を持っていいということに気付きました。改めて、売るために商品価格を安くするのではなく、価格に耐えうるブランディングをしていく重要性を感じました。そのためには、良いものをつくるだけではなく、もっと積極的にこちらから商品の良さを伝えていく必要があると思っています。最近ではインスタグラムに海外のお客さんから直接問い合わせが来ることも増えてきており、日英での発信に本腰を入れていきたいと思っています。特に一品もののアートこけしは、誰がどんなインスピレーションを受けて制作したのかといった想いやストーリーを伝えるのが重要だと思うので、先を見据えてある程度経費をかけてでも写真やカタログをそろえる必要があると思っています。こうした準備を整えたうえで、改めてTAKUMI NEXTにも挑戦したいと思います。

藤川氏がこけしを製造する様子。一般的に『ろくろ』と呼ばれる技法であり、こけしに限らず、広く木工品の製作、主に円筒状の加工(お椀やうつわなど)する際において使用される。加工する木材をろくろに固定し回転させ、手に持った刃物を当てて挽く(削る)技法で、手動で広範囲に刃物を動かすことにより、様々な加工が可能になる。

ジェトロ担当者からの一言コメント

同社の工房には異なる作家さんによる様々な創作こけしが展示されており、その可憐な表情に癒されました。特に一点もののアートこけしは、それぞれが掘り出された木の本来の魅力が活かされており、豊かな自然を大切にするこころがバイヤーにも伝わったのだと思います。海外の市場を取っ掛かりとして、創作こけしの真価を伝えていく同社の挑戦を今後も支援したいと思います。

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有限会社藤川工芸

群馬県渋川市
https://www.fujikawa-kogei.com/index.html外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
代表:藤川 衛一
設立年:1962年
事業内容:創作こけしの制作・販売

2023年12月

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