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豊國酒造合資会社

言葉表現やビジュアルを駆使して自社ブランドと向き合った結果国内外の営業で効果が見られる

江戸・天保年間の創業。日本酒の製造・販売を行う。創業以来200年近くにわたって、受け継がれてきた伝統と格式を重視した「東豊國（あずまとよくに）」と、「伝統・格式＋モダン」のコンセプトの下、新たに作られた「一歩己（いぶき）」の2銘柄を軸に展開。

福島県石川郡ウェブサイト

展開国・地域：: ・2020年度台湾
・2021年度シンガポール、米国ほか
事業内容：: 日本酒の製造・販売

9代目蔵元矢内賢征氏

バイヤーは酒造りへの思いにまで強い関心を寄せる

当社は阿武隈山系に位置する自然豊かな小さな町、古殿町で、江戸の天保年間に創業して以来、200年超にわたって日本酒を製造・販売しています。2019年に力試しのつもりでジェトロ商談会に参加した際、海外のバイヤーは実にいろいろな思いを持った人がいるということを知り、輸出の本格化に踏み切りました。生産量や値段だけが重視される世界ではなく、価格や品質以外にもブランド名の由来や取り組みの経緯など、当社のものづくりへの思いにもバイヤーの強い関心があることに、良い意味での驚きがありました。新輸出大国コンソーシアムのハンズオン支援が始まると、ブランディングをテーマにパートナーによるワークショップで学び、2021年度にはパートナーによるハンズオン支援が本格化するなど、フェーズに応じてシームレスにサポートいただきました。展開国は、すでに先駆者によって日本酒市場がある程度確立している国をターゲットにして進めていきました。

地元の農家やレストランの人たちとのコミュニケーション

土地や気候など、商品の背後にある情報を整理する

当初は、海外バイヤーの選定基準も漠としていましたが、条件がそろい取引が始まると国内同様に長くお付き合いする相手となることから、目に見えにくいながらも「思いを共有できるバイヤー」かどうかを見極めて、一つひとつの出会いを大切に検討していきました。当社のものづくりに対する思いをより良く理解いただけるよう、商品だけでなく、思いを率直に伝える表現と映像や写真などのビジュアルを使って、海外向けプライベートビデオも制作。国内では古殿町を地理的に示す程度だったのに対し、改めてこの土地の良さ、歴史、形成された文化であったり、この地の気候が米の生育、水、酒造りにどう影響しているのか、一つひとつ丁寧に説明できるよう情報を整理しました。なぜこのような味わいを生み出せるのか、なぜ江戸時代から酒を造っているのか、なぜブランドカラーに緑色を採用しているのか。これらにもすべて意味があるからです。

伝統と格式にモダンを加えたコンセプトの「一歩己」

原料から最終消費地まで、関わる人の思いを紡ぐ

商談では当社の商品も試飲いただいていますが、味の説明に加え、相手が関心を寄せているポイントを見極めてこだわりやストーリーも紹介しています。当社商品の持つ確かな味わいは海外でも最も評価いただいており、10年前に作り上げたブランド「一歩己」も、「甘みと酸味に加えてほどよい苦味もある、味のバランスがとれた、ありそうでなかったタイプ」と評されています。ハンズオン支援のパートナーのアドバイスの下、海外向けに自社ブランドと徹底的に向き合ったことで、国内で営業を展開するときにも良い効果が得られています。なぜ輸出するのか、海外向けにどういう商品をつくるのかを考えるだけでも社内に新しい風が吹いてきます。当社ではこれからも、原料供給者のコメ農家さんの思い、できあがった日本酒を飲食店で提供するシェフの思いなど、消費者に届くまでにつないできたバトンを大切に、挑戦を続けていきます。

専門家からのポイント

矢内代表に初めてお会いしたとき、「一歩己」誕生への思い、なぜ日本酒を作り続けるのか、なぜ「一歩己」の味わいを生み出し伝えたいのか、などを熱く語っていただいたことが強烈なインパクトとなり、海外でのファンづくり、長くお付き合いできる関係性づくりに重きをおいて、軸がぶれないスピード感ある支援を心掛けてきました。商談が進行する中での試飲サンプル手配など、丁寧かつ迅速な対応を行っていただいたことは成功への大きな要因です。世界市場における「一歩己」のファンづくりはまだ始まったばかり。まだ巡り合っていない新たな出会いが期待できます。

ご利用いただいたジェトロのサービス

新輸出大国コンソーシアム
日本企業の海外展開を支援する全国のあらゆる支援機関が結集し、海外展開にご関心をお持ちの中堅・中小企業の皆様へワンストップの支援サービスを提供します。