株式会社秀イノベーティブLAB

2017年に前身の会社でインド人学生をインターンシップで受け入れたことをきっかけに、インドへの進出を検討し始めました。2030年までに人口最多国になるといわれるインドは、生産労働人口の約半数を農業従事者が占める世界一の酪農国家。なかでもヒンドゥー教徒のベジタリアンが多い北西部では、老若男女を問わず多くの人が動物性たんぱく質をミルク由来で摂取しており、生ミルクは人々の生活必需品となっています。JICAの知人から「具体的な進出を検討するならば」とジェトロを紹介され、ハンズオン支援に申し込みました。専門家のアドバイスに基づいて徹底した基礎調査を進め、現地にも同行いただいて、海外進出のカギを握るビジネス・パートナーを選定しました。現地責任者を採用し、彼の実家がある北西部ラジャスタン州の農村部に2019年8月、現地法人H2 Milk Farm Private Limitedを設立しました。設立前から現地責任者の家族や親戚との交流も深めており、このことが、現地銀行での口座開設など、事業を推進する上で強力なサポートになりました。現地では法人設立の後、牧場建設が完了し生乳やギー（バターの一種）を生産し始めました。

海外赴任や生活の経験もなく、全く初めて海外に飛び出しました。これまでを振り返って最も苦労したのは、厳しいロックダウンが発令されたコロナ禍での販売不振でしたが、それも今は回復基調にあります。コロナの影響を除いたら、苦労したのは、日本人とインド人との商習慣や価値観の違いです。これには多々驚かされてきました。時間厳守はまずない。「NoProblem＝大丈夫」ではない。ボスの言うことが絶対。こうした「暗黙知」については、専門家に加え、ジェトロ・ニューデリー事務所のアドバイザーからも細かく教えていただきました。価値観の違いを前提に相手の行動を予測すれば、こちらからの計画や指示の出し方を調整でき、事業の推進もかなり円滑になりました。また、新興国は特に税制などの法制度が頻繁に変更されますが、そうした「形式知」についても、ニューデリー事務所を訪ねる度に、ジェトロのアドバイザーから最新の資料とともに助言やレクチャーをいただき、現地で事業を進める上での重要な情報源となりました。