吉田刃物株式会社

国内の大手鋼材メーカーから最高級ステンレス鋼材「ZDP189」が発売された当初より、弊社では包丁職人である工場長が試験的にこの鋼材を購入していました。「ZDP189」は、高級ナイフ用鋼材としても国内外から注目を集めており、工場長が試行錯誤して刃物を作ってみると、その素晴らしい刃立の良さに感動しました。「ZDP189で包丁が作れないか」という引き合いも重なり、弊社では包丁の製作を決意しました。 その後、国内の有名産地の刃物展示販売等を行う「やすぎ刃物祭り」に出展し、試作品を販売しました。すると、すぐに熱心なファンに口コミで広がり、「ZDP189の包丁のこの形が欲しい」などの要望に応えながら製作を続けた結果、今では扱う商品の種類も増えています。また、カタログやウェブサイトを作成したところ、多くの引き合いをいただきました。弊社の包丁は、1本1本を全て手造りしているため、現在では納期が1年待ちとなるほど人気を集めています。

他方で、弊社の海外向けウェブサイト等からの問い合わせも徐々に増えました。その中で、メールだけのやり取りでは見えない部分も多く、実際に取引相手とお会いして商談する機会が必要だと強く感じていました。ちょうどその頃、2018年度に佐賀県海外チャレンジ補助金を活用して、ドイツで開かれた国際見本市「アンビエンテ」に九州の刃物屋として初の出展を果たすことができました。
続けて、2019年度には、ジェトロの「新輸出大国コンソーシアム」の専門家支援を活用しながら、再び「アンビエンテ」に出展しました。1回目の反省を活かしつつ、担当の専門家より、チェックシートや契約書の作成から、取引先の選定まで様々な助言をいただきました。見本市の期間には実際に現地出張にも同行いただき、16件もの成約を結ぶことができました。
今後も引き続き「アンビエンテ」への出展を予定しています。欧州での販売を網羅できる地域戦略を持ち、包丁のメンテナンスもできるような販売店とのマッチングを目指しています。

ジェトロの「新輸出大国コンソーシアム」を利用したことで、最高のパートナーを得ることができたと思います。弊社は海外への販路拡大については全くの素人であり、弊社だけでできることは限られていました。「アンビエンテ」に初めて出展した際は、まさに見切り発車のような状態でした。しかしながら、海外ビジネスの経験豊富な専門家から様々なノウハウを直伝いただき、数々の学びから多くの成功体験を得ることができました。これを機に、「ZDP189」で作った包丁だけでなく、昔ながらの黒内ハガネ包丁や、本職向けの青紙や白紙の本焼き包丁などの輸出にも挑戦したいと思います。
また、好評いただいている一方で、現在は各種包丁の受注残を多く抱えており、その解消に向けて人員や設備の増強にも取り組みます。何よりも、まずはお待たせしている案件にしっかりと対応することが大切であり、その上でお客様の新たなご要望にお応えし続けることができる生産体制をいち早く構築してまいります。これまでを振り返ると、やはり弊社にとってジェトロの専門家との出会いが現在までの成果へと結びついていると実感します。