有限会社長浦製作所

弊社は、主にプラスチック射出成形用の金型を製造しています。金型産業はものづくりの中でも基幹産業であり、大手メーカーの海外展開が進むにつれて、金型業界でもグローバル化が急速に進んでいます。一方で、国内では金型産業は衰退傾向にあり、空洞化が進んでいます。そのため、弊社が生き残るためにも、商圏を拡大し、国内外のものづくりを活性化させたいという想いを持っていました。そのような時に、定期的に参加していた同業者が集まる勉強会で、先輩経営者から海外展開の魅力を聞いたことをきっかけに、本格的に検討を始めました。同勉強会でジェトロを知り、早速「新輸出大国コンソーシアム」の専門家支援に応募しました。弊社は、中国や韓国の企業に製造委託した経験がありますが、ベトナムという未知の市場への挑戦に社内からは懐疑的な声もありました。会社の将来のために意義があるという雰囲気を醸成することを意識し、社内体制の強化に努めました。

当初は語学面に不安があり、現地の日系企業を標的顧客としました。しかしながら、金型への技術的な感覚や仕事の取り組み方が合わず、パートナーを見つけるには至りませんでした。そこで、ジェトロの専門家からアドバイスを受けつつ、現地のベトナム企業に標的を変更しました。商談を行った企業の多くは社歴こそ浅いものの、高い成長意欲がありました。加えて、経営者が日系企業での就業経験を有していたため、技術面で高い意識レベルで会話することができました。現状の技術力だけでなく、姿勢や潜在性を見定め、相互理解を深められるパートナーを見つけられたことが、ベトナムでの事業を前進させられた要因だと思います。長く弊社の戦略をともに考え、時に現地への同行を通して支援いただいた担当の専門家や、パートナー候補企業の発掘支援をしていただいたジェトロ海外事務所の協力があり、自社だけでは困難なローカル企業との関係構築を実現できました。

2018年にベトナム企業3社と覚書(MOU)を締結し、その内2社とは2019年に製造委託するなど、着実に現地パートナーとの関係を構築しています。弊社が海外展開から得たメリットは3つあります。第一に、商圏を広げる機会を掴めたことです。第二に、受注増加に伴い、社内のマンパワーが逼迫するなか、生産能力を高められたことです。第三に、現地にパートナー企業がいることで、営業面の信頼度を高められたことです。
また、海外では相手の発言と実態が乖離していることもあり、鵜呑みにすることは厳禁だと実感しました。現地パートナーの経営者と意思疎通できているか、また現地パートナー企業経営者が、社内で自身の意識を形作り、実践できているかを、しっかりと見極めることが大事だと考えます。何事も取り組んでみないと始まりません。弊社は、現地の商習慣を熟知する専門家からの後押しで1歩進むことができました。今後はベトナム事業の最終目標である自社金型の安定的な輸出、商流の開拓に向けて取り組みを進めていきます。