有限会社高知アイス

弊社はアイスクリームと清涼飲料のメーカーです。濃縮還元果汁ではなく生の果汁を使用し、素材感たっぷりのプレミアムな味わいを特徴としています。また、原料は生産者を直接訪問し、畑の条件や栽培方法等を確認したうえで契約したものを使用するなど、トレーサビリティを徹底しています。1988年の創業以来、国内の量販店等に販路を広げてきましたが、アイスクリームは季節性商品のため冬季の売上の平準化が課題でした。そこで、「一年中気温の高い南国であれば安定して売れるのではないか」と思い至り、2008年に上海と香港の商談会へ単身で参加しました。商談会の合間に現地のスーパーマーケットで市場調査を行い、特にシャーベットに関しては競合商品がなく、海外でも通用すると感じました。同商談会で出会ったバイヤー経由で香港への輸出が実現するとともに、その後も自ら海外見本市や催事に積極的に参加して、シンガポール等のアジアを中心に海外販路を拡大してきました。

アジアへの販路開拓が一段落ついた2018年、次は欧州を目指そうとジェトロに相談しました。高所得者が多く、日本産食品の競合が少ないスイスであれば参入しやすいのではとの仮説を立てて、最初のターゲット国にしました。ジェトロの専門家とスイスへ出張し、市場調査を行うとともに卸先候補企業を個別に訪問することで、現地の日本産食品市場や現地の食品流通チャネルの情報を収集しました。日本産の「安心・安全」というイメージやブランドが活かせるアジアとは異なり、欧州は食品に対して非常に保守的な面があり、売り込むのに苦労しました。それでも、欧州では高知県のプロモーションをきっかけにゆずブームが起きており、そのブームを追い風に見本市や商談会等で商品の魅力を伝え続けました。そうした活動が功を奏し、結果的に商社からの熱烈なオファーを受け、スイス、ドイツ、フランスへの輸出を果たしました。より安定した取引を行うため、今後も欧州市場へアプローチを続けていきたいと思います。

今から輸出を目指されている方に対してお伝えしたいのは、「打たん太鼓は鳴らん」ということです。太鼓は打ってみないと、どんな音がするのか分からないと思います。行動しなければ、百年後も何も変わりません。一歩前に進んだら、二歩目が前に出ます。ただし、我々のような中小企業の場合、生産量に限りがあるので一気に広げようとするのではなく、まずは信頼して取引できるパートナーを見つけられれば良いと思います。あとは、海外の消費者に「欲しい」と思わせる特徴のある商品を開発することです。日本から輸出した場合、現地での小売価格は物流費等が加わり日本の小売価格の2～3倍になるので、高価格帯商品を購入できる所得者層が土壌として必要です。しかしながら、現地産や他国産と比べて少し高価だが、「それでも美味しいから欲しい」、「この商品でないとやっぱりだめだ」という商品であれば自ずと消費者は認めてくれると思います。