株式会社トライテック

以前、東京で友人とともに土木(トンネル)関連の資材会社の仕事を行っていました。その業務の一環で、出身地・大分に出張した際、地元の製鉄所で働く友人に何か困っていることはないかと聴いたところ、「高炉に穴をあける作業で1穴を貫通させるのにドリルロッドを3本ほど使用している」との相談を受けました。そこで、土木で培った技術を活用した弊社の製品を紹介すると、1本のドリルロッドで貫通することができ、課題解決に繋がりました。これが製鉄所向け事業の始まりとなり、その製品の延長が現在のグラインドビットになります。
弊社が海外展開を意識し始めたのは、約6年前、大分県主催の台湾ミッションで現地の製鉄所から弊社製品の品質について関心が高まっていると感じたことがきっかけです。加えて、高炉の閉鎖計画など国内市場に限界を感じていたこともあり、ジェトロの専門家とともにベトナムの高炉を訪れ、商談もしました。昨年は、ソーシャルメディアを通じた個別の売り込みをきっかけに欧州やインドの最大手の製鉄会社に弊社のグラインドビットやランスパイプを納品することができました。専門家のアドバイスや商談支援が本当に助かりました。

弊社では、海外事業部は設けておらず、様々な部署の人員が輸出事業に対応しています。海外に進出した他の企業が業績悪化により撤退する状況の中、そこで働いていた社員が弊社の採用情報を見て応募してくれるなど、景気後退局面にもチャンスがあると感じています。コロナ禍においては、販路開拓のための海外渡航ができないこともあり、その予算をサンプル品の輸出に回してまずは使ってもらうことに注力しています。弊社のランスパイプはセラミック加工で耐久性が高く、溶けたり焼けたりしにくいので、使えば違いをわかっていただけると確信しています。
また、コロナ禍で在宅勤務をした際に、日本時間の夜間にFacebook上で積極的に動画をアップロードしたところ、現地の業務時間に合ったようで8万ヒットもの反響がありました。まだヒット対応はできていませんが、嬉しい悲鳴です。

中国の高炉メーカーの増産による供給過多と価格下落に加え、年初からのコロナ禍が追い打ちをかけ、国内の高炉メーカーは大幅な減産を余儀なくされています。そのため、世界的に高炉向け製品が主力である鋼材事業は鈍化が避けられません。そこで、弊社は新たな事業として医療機器分野やインテリア分野にも挑んでいます。例えば、腹腔鏡下手術に使用する器具の先端を水とエアーで洗浄する装置を開発しました。今までは、手術中に先端が曇る都度、看護師が取り出して拭いていたところを取り出す必要がなくなったので、手術時間の短縮と患者の負担減になり医療関係者から高く評価されつつあります。もともと弊社はお客様の「困った」を解決したところから創業しており、専門分野ではないからこそ見える部分もあると思います。
私は今まで「これをやりたい」と思ったことを行ってきました。その中で思いついた事を会社全体で作り上げてきました。これからも皆様の「困った」を解決するパートナーとして、モノづくりの未来を作り続けていきたいと考えています。