株式会社浅野歯車製作所

弊社は、長年にわたり、ギアやトランスミッション一筋で事業を行っています。農業従事者の高齢化等により国内需要が低下し、大手メーカーが早々と農業機械市場から撤退する中、製品を必要とする人に届けるべく、地方の小規模メーカーからの小ロット注文等にも対応してきました。しかしながら、国内の就農人口の減少に歯止めはかからず、80年代後半から90年代前半のピーク時には2万台ほどあった受注が半減するほど厳しい状況でした。
2016年に国内展示会でイタリアの有力農機メーカーの目に留まり、公益財団法人しまね産業振興財団の支援のもと、2017年に成約、2018年に初輸出に成功しました。さらに、その輸出先企業がドイツで開かれた見本市で弊社のミッションを搭載した農機具を紹介し、大好評を博しました。それ以降、ドイツ、フランス、スイス、米国などへ同社の農機具に搭載する形で間接的に販路を拡大しました。しかしながら、円高や不景気の影響もあり、その後の輸出は止まってしまいました。

イタリアへ輸出した経験から、欧州には小型運搬車に対応した変速機自体が少ないことがわかりました。小型運搬機を製造するには、高度な加工技術でミリ単位の超薄型に仕上げたギアが必要となります。この高度な技術力こそが海外で求められる弊社の強みであると改めて認識しました。とはいえ、イタリアへの輸出は止まり、これまでは受注に対応する形でしか取引をしていなかったため、海外展開に向けてどう動くべきかわかりませんでした。
ちょうどそのとき、ジェトロ松江から「新輸出大国コンソーシアム」の紹介を受けました。以前から支援いただいていたしまね産業振興財団も同事業の支援機関であり、ジェトロと協力して支援してもらえると知りました。輸出を経験したことで社内の士気が確実にあがっており、社員のためにも同事業を利用して海外販路開拓を進めていくことを決意しました。

ジェトロの専門家から、「小型変速機の年間三万台を超える生産量は日本一」、「イタリアから前払いで二回も注文があった事実は、製品が魅力的である証明」との言葉を受けて、自社の強みを再確認しました。専門家の協力のもと欧州の市場調査を実施し、ターゲット国をイタリアとドイツに絞りました。海外企業とのコミュニケーション方法に関するアドバイスをもとに、受注が途切れていたイタリアのメーカーに製品の評判を聞くメールを送るところからはじめ、2019年末には取引が再開できました。他にも、タイの企業から合弁会社設立の話も舞い込み、急速に海外展開が進みつつあります。現在は、コロナ禍により海外渡航が制限されていますが、取引先候補をリストアップするなど、更なる販路拡大に向けた準備を進めています。
ジェトロに加え、島根県やしまね産業振興財団が連携して支援してくれるので、大変心強いです。今回の経験から、弊社の強みを生かして海外展開を実現できると知ることができました。社員の為にも、「小型変換機といえば、浅野歯車製作所」と世界に弊社の名が知られるよう、今後も進んでいきたいです。