RCEP協定、発効から3カ月で1万件の輸出に活用

(日本、中国、韓国、ASEAN、オーストラリア、ニュージーランド)

アジア大洋州課

2022年04月22日

日本の経済産業省が公開した4月1日付の第1種特定原産地証明書の発給状況外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の活用が加速し、少なくとも累計1万件の日本からの輸出取引が行われたことが明らかになった。経済産業省は、日本商工会議所のデータを基に毎月、企業が輸出取引に当たって利用する経済連携協定(EPA)別の第1種特定原産地証明書の発給件数を公開している(注1)。RCEP協定の同証明書の発給件数は3月に6,371件で、前月の3,450件から1.8倍に増加した。3月単月の発給件数は、日インドEPA(5,333件)や日インドネシアEPA(5,239件)を上回り、日タイEPAの8,706件に次いで、2番目に多かった。

1~3月のRCEP協定の同証明書の発給件数は、合計1万492件となり、同協定発効から3カ月間で1万件を突破した。他のEPA協定の1~3月の発給件数と比べると、日タイEPA(2万3,419件)、日インドEPA(1万3,758件)、日インドネシアEPA(1万3,276件)に次いで4番目に多かった。

中国、タイの日系企業などで具体的な活用進む

RCEP協定を利用した日本からの輸出取引が急速に伸びている要因として、日本から中国に対する輸出での利用が挙げられる。3月30日付の中国新聞網によると、中国蘇州の日系メーカー(電子機器部品)は「RCEP発効によって(一部原材料の)輸入関税が4%から無税に下がり、年間127万元(約2,540万円、1元=約20円)の減免税となる」とコメントした。同社の試算によると、日本から輸入する原料や半製品について、RCEP発効後1年目に350万元近くの減免税が見込まれる。

さらに東南アジアでも、RCEP協定の活用が進められている。タイの日系食品メーカーは3月23日、ジェトロに対し、日本からタイへの輸出時のEPA活用について「日タイEPAでは困難だったが、RCEP協定で可能となり、大きな節税効果があった」とコメントした。ジェトロにおいて同社関連製品のRCEP協定の利用条件を調べたところ、原産地規則が「関税番号変更基準(CC)または付加価値基準(RVC40%)」の選択制になっており、日タイEPA(原産地規則はCCのみ)に比べて、条件が緩和されていた。

RCEP協定は、3月18日にはマレーシアでも発効(2022年3月18日記事参照)したため、日本・中国・韓国・オーストラリア・ニュージーランドおよびASEANの7カ国(シンガポール、ブルネイ、マレーシア、タイ、ベトナム、カンボジア、ラオス)で発効済みとなった。未発効のインドネシアとフィリピンのうち、インドネシアは当初3月中の発効を目指していたが、少なくとも4月まで国内手続きがかかる見込みが報じられている。フィリピンは5月に大統領選挙を控えており、直近で発効の見通しに関する政府発表などは出ていない状況だ。

なお、RCEP協定における各国の譲許表(個別品目の関税の撤廃・削減の方法やスケジュールが定められた表)は、同協定の条文の付属書(Annex I)に掲載されており、外務省のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから確認が可能だ(注2)。

(注1)第1種特定原産地証明書は、日本国内の事業者がEPAを利用した輸出取引を行うに当たり、日本商工会議所に対して申請し、発給を受けるもので、「第三者証明制度」を採用するEPAで利用される。他方、輸出者や輸入者などが自ら原産地証明書を作成する「自己申告制度」のみを採用するEPA(TPP11、日EU・EPAなど)については、上記統計に含まれない。なお、RCEPでは第三者証明制度に加え、認定輸出者もしくは輸出者による自己申告制度(輸出者による自己申告制度は協定発効時には日豪NZ間のみ適用可能)および輸入者による自己申告制度(日本への輸入時のみ適用可能)も採用されている。

(注2)各国ごとの付属書(Annex I Schedules of Tariff Commitments)は英文のみの掲載。日本の譲許表は日本語でも入手可能外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。RCEP協定活用の際の関税率の調べ方は「RCEP協定解説書(2022年2月改訂版)PDFファイル(12.0MB)」の第3章参照。

(山城武伸)

(日本、中国、韓国、ASEAN、オーストラリア、ニュージーランド)

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