湖北省、外国人就労許可を柔軟にする運用指針を導入-学歴や就業経験にかかわらず、一定の要件を満たせば就労が可能に-

(中国)

武漢発

2018年03月28日

湖北省政府は今般、外国人就労許可制度を柔軟に解釈することを可能とする独自の運用指針を導入した。従来、学歴や就業経験が条件に達しない場合は、原則として認められなかった就労許可が、湖北省では給与などその他の要件を満たせば認められる。今回の方針は当地の日系企業から歓迎されるとともに、当地に投資を検討中の日系企業にとっても朗報となるだろう。

全国で導入された制度改革に対応

外国人就労許可制度とは、国家外国専門家局が発行していた外国専門家就労許可証(専家証)と人力資源・社会保障局が発行していた外国人就業許可証書を、外国人就労許可証に一本化し、発行機関も国家外国専家局に一元化したものだ。2017年4月から、全国で導入された(2017年5月2日記事参照)。

この制度改革の主たる目的は、以下の2点に集約される。

1点目は、行政面の簡素化・合理化にある。専家証と就業許可証書を外国人就労許可証に一本化とするとともに、申請に当たっては、ペーパーレス化も図られた。

2点目は、分類管理を導入したことだ。A類、B類、C類の3つのカテゴリーに分類し、ハイレベル人材であるA類の人材招致は推進、ハイレベルに準じる人材のB類は適正に管理し、その他人材のC類は制限することで、入国する外国人の選別を図る。それぞれのカテゴリーの認可に当たっては、学歴、投資規模、給与、ポイントなど複数の要件が明記されているが、いずれか1つに該当すれば、許可が下りる。

なお、健康に問題がないこと、犯罪歴がないこと、満18歳以上であることは、引き続き、基本的要件となっている。

上記を踏まえ、湖北省では今般、外国人就労許可制度を柔軟に解釈することを可能とする独自の運用指針を導入した。要点は以下の3つだ。

1点目は、日系企業の駐在員の大半を占めるA類とB類において、年齢制限が事実上撤廃された。高齢のみの理由で就労許可が却下されることはなくなった。ただし、C類については従来と同じく、60歳以上の申請は許可されない。

2点目は、A類とB類のポイント制度において、湖北省独自の加点導入が図られた。学士以上の学歴や中国語能力を有しない場合であっても、就業経験などその他のさまざまな要件でポイントが加算されるため、就労許可取得の面で柔軟性が増した。例えば、中国語の学習経験がなかったとしても、就業経験が17年の場合は、20点加点される。その他の要件と合わせれば、就労許可が下りる可能性は高くなる(注)。

3点目は、行政面の簡素化・合理化が進んだことだ。申請に当たっては、さらなるペーパーレス化で、申請者の負担軽減が図られた。また、既に中国に滞在している申請者は、中国国内で申請が可能となった。

給与条件だけでA類、B類の許可が下りる見通し

またA類とB類の許可の要件として、給与、ポイント数などについて例示があり、どれか1つに該当すれば許可が下りる。そのうち、税引き前の給与については、A類は当地の平均給与額の6倍以上、B類は4倍以上が要件とされている。大半の日系企業の駐在員の給与をみると、A類ないしB類として許可が下りるとみられる。なお、この場合の給与の定義については、北京、上海など地域ごとに差異があるが、李杰・湖北省外国専門家局科長によると、同省では「雇用契約に定められた給与」としている。

他方、就労許可を得ずに、あるいは、期限が切れたまま就労した場合は、中国出入国管理法第41条の規定により、不法就労と見なされ、雇用者、被雇用者、仲介者それぞれが罰則が科せられるため注意が必要だ。

特に、日系企業で多いのは、就労許可の期限が切れたことに気が付かないまま、就労を続けるケースだ。このため、李科長は「必ず期限前に申請を出してほしい」と注意を呼び掛けている。

今回の湖北省政府が運用指針は、当地の日系企業にとって歓迎されるだろう。また、当地に投資を検討中の日系企業にとっても、投資先選定の際に考慮すべき事由の1つとなるとみられる。

(注)外国人入国就労分類基準(試行)(外専発【2017】40号)。

(古谷寿之)

(中国)

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