EU首脳会議、ブレグジット問題で手詰まり感

(EU、英国)

ブリュッセル発

2018年07月02日

欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長は6月29日、ブリュッセルで前日から開催されていた欧州理事会(EU首脳会議)を総括して声明を発表した。難民・移民問題の対応方針については合意に達したとしたが、最終的な問題解決には程遠いことも認めた。また、英国のEU離脱(ブレグジット)問題についても交渉の進捗確認にとどまり、課題が山積している実態に言及した。

実質的な問題解決に合意できない厳しい現実

トゥスク常任議長は、難民・移民問題について「協議の成功について言及するのは時期尚早で、何とか合意にこぎ着けたものの、それは最も解決が容易な部分についてであり、その実施・運用に向けては課題が待ち受けている」と合意をめぐる実態を率直に認めた。具体的には、同議長が提案した、(1)EU域外に設置する「入境プラットフォーム」の検討、(2)次期「中期予算枠組み(MFF)」における不法移民対策に向けた予算整備、(3)リビア沿岸警備隊に対するEU支援の強化、の3点についてEU各国首脳は合意したとしている。

このほか、EU域内に設置する難民・移民の管理センターについてはあくまで「設置を望む国がその運用(本国への強制送還や一時的な移動・定住の在り方)についても任意ベースで検討する」ことで合意したものの、具体的な実施・運用について曖昧さを残した。また、難民・移民流入の抑制に向けたトルコへの財政支援の継続、北アフリカへの5億ユーロ相当の開発基金を通じた財政支援の実施などについても合意したという。

他方、ブレグジット問題についても、トゥスク常任議長は「この先、やらなければならないことが山積している。最も難しい問題も未解決のままだ」「(EU側が想定する交渉期限の)10月までに合意するためには迅速な進展が必要だ。これが交渉妥結に向けた最後のチャンスとなるだろう」と語り、ブレグジット交渉について手詰まり感をにじませた。産業界も、ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)など労使4団体が6月27日に交渉進展を求める声明を発表(2018年6月28日記事参照)するなど、交渉停滞に対する危機感は根強い。

なお、懸案の米国との通商問題については、欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長が閉幕後の記者会見で、7月に米国のトランプ大統領とワシントンで会談、協議すると語った。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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