上海自由貿易試験区で7つの新通関制度を実施、手続きを簡素化

(中国)

上海事務所

2014年05月07日

上海税関は中国(上海)自由貿易試験区における通関手続きを簡素化するため、「先進区後報関」など7つの新通関制度を公布し、実施している。さらに、6月末までに新たな新通関制度を公布・実施する予定だ。

<物流の時間短縮でコスト削減効果>
上海税関は4月22日、7つの新通関制度を公布し、即日または5月1日から実施している。概要は以下のとおり。

(1)「先進区後報関」
企業管理類別(注1)B級以上の企業は「上海自由貿易試験区税関監督管理情報化システム」に接続できるコンピュータ管理システムを構築すれば、「先進区後報関」の資格を申請できる。通常は、企業はまず通関手続きを済ませ、その後で貨物を試験区内に搬入するが、「先進区後報関」の資格のある企業はまず貨物を搬入し、その後通関手続きを行うことが可能になる。2013年10月から6社を対象に「先進区後報関」制度をテスト的に実施し、同年12月に対象企業を47社に拡大した(2014年2月17日記事参照)。その結果、対象企業の貨物を試験区内に入れるための所要時間は従来の2〜3日から半日に短縮し、物流コストは約10%削減されている。

(2)自社所有車などを活用した貨物運輸
各税関特殊監督管理区(注2)間の貨物運輸は、税関が認定した運輸会社の「税関監督車」で行われている。上海自由貿易試験区には、地理的に離れている4つの税関特殊監督管理区(外高橋保税区、外高橋保税物流園区、洋山港保税区、浦東空港総合保税区)がある。試験区内企業は4つの税関特殊監督管理区間の貨物運輸について、税関に登録した自社所有車または他社の車を利用して自分で行うことが可能になる。上海税関は2013年10月29日から12月31日まで同制度のテストを行い、洋山港保税区と外高橋保税区との間の貨物運輸時間が5〜6時間から3〜4時間に短縮し、運輸コストは1台1回当たり約200元(約3,200円、1元=約16円)削減できるという結果が出ている。

(3)加工貿易のための保税輸入原材料の使用・在庫状況確認方式
保税区で加工貿易を行う企業は、保税輸入した原材料を輸出用の加工品生産のみに使用でき、任意に国内販売や国内販売品の生産に転用できない。税関は保税輸入原材料の使用・在庫状況を監督しており、当該企業は各保税輸入原材料に資材コード(中国語「料号」)を振り、定期的に書類または電子システムで、税関に資材コードごとの使用・在庫状況を報告しなければならない。今回の新制度により、税関は保税輸入原材料の電子システムにHSコード(中国語「項号」)を導入し、資材コードと連動させる。HSコードは世界共通で、資材コードより分類項目が少ないため、HSコードで保税輸入原材料の情報管理を行うのは従来の方法より効率的で、税関の審査時間を短縮できる。ただ、企業は新制度の適用対象になるための申請を行わなければならない。

(4)保税展示交易
これまで試験区内での保税展示は可能だったが、今回の新制度により、税関に関税保証金を払った上で、区外での保税展示が可能になる。また、保税展示期間内に展示品を国内向けに販売し、事後に輸入品として関税を支払うことも可能になる。

(5)試験区内外での搬入・修理
これまで試験区内の企業は、区内で生産し区外に販売した製品を、区内に搬入して修理することが可能だったが、今回の新制度により、条件を満たした区内企業は、区外で生産した製品も区内で修理することが可能になる。

(6)先物保税受け渡し
これまで政府は洋山港保税区で銅・アルミの先物保税受け渡し業務をテストしてきたが、今回の新制度により、上海自由貿易試験区の4つの税関特殊監督管理区で上海先物取引所が取り扱う全品目の先物保税受け渡しが可能になる。

(7)ファイナンスリース業務
これまで政府は浦東空港総合保税区でファイナンスリース業務をテストしてきたが、今回の新制度により、上海自由貿易試験区の4つの税関特殊監督管理区で同業務が可能となる。

なお、上海税関は通関手続きの簡素化を進めるため、6月末までにさらに7つの新制度を公布・実施する計画を発表している。

(注1)企業管理類別とは、税関総署が通関実績に基づいて企業にAA、A、B、C、Dという5つの評価ランクを付け、ランクが高いほど通関手続きを簡素化する管理制度のこと。
(注2)保税区や上海自由貿易試験区など、国務院の認可によって税関管理では国外と同じように取り扱われ、税関が該当地域に出入りする貨物の監督・管理を行う特別なエリアを指す。

(文涛)

(中国)

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