輸入税は10月に元の水準に下がる見込み−法務・労務・税務勉強会(3)−
サンパウロ事務所
2013年08月30日
シリーズの3回目は、8月6日に開催された第4回の勉強会で取り上げた税務について。輸入税は2012年10月から100品目について引き上げられたが、2013年10月に以前の水準に引き下げられる予定だ。商品流通税は本店−支店間の商品移動の際は課税されないという判例が最近出たという。
<増税には前年度中に法の公布が必要>
ブラジルでは、所得の約40%に相当するといわれる税負担と、企業の売上高の1.5%にも相当するといわれる税務管理コストが「ブラジルコスト」の主因の1つであり、進出日系企業が抱える最大の問題の1つでもある。勉強会では、税体系の基本に加え、進出日系企業が直面した課題や関心の高い事項などを中心に、税務管理の留意点が解説され、それらについて参加者が議論した。なお、ブラジルの税制に関する基礎情報はジェトロのウェブサイトでも入手可能。
勉強会で講師を務めたジルセウ佐藤弁護士は「1988年の新憲法制定以降、連邦政府、州政府、市政府合わせて29万以上の法令が出され、60種類以上の税金がある。その組み合わせは1,100万を超えるともいわれている」と語った。ブラジルの税負担と税体系の複雑さが見て取れる。
税法の原則として、a.法治の原則(全ては法律に基づく。大統領や知事などの独断では決められない)、b.平等の原則(同じ状況下にある納税者間に差別を設けない)、c.不遡及(そきゅう)の原則(新税の導入時などは、過去にさかのぼって課税しない)、d.法律事前の原則〔新税・増税は、同じ会計年度中(1月1日〜12月31日)には施行できない。つまり、増税する場合は、前年のうちに法律が公布されなければならない〕、e.優遇措置の法治性(税金・料金の減免などは、連邦・州・市の特殊令が必要)といった考え方がある。
進出日系企業も含め、工場の建設などで地方政府から税務上の恩典を受ける企業も多い中、こうした原則を認識しておくことは事業の企画立案や進捗を管理する上でも重要となる。
<連邦税には税金とサービス料、負担金>
○連邦税には、a.輸入税、所得税、工業製品税(IPI)、金融取引税などの各種税金、b.港湾のコンテナ使用料やパスポート発行料、環境省のライセンス発行料などの行政サービス料金、c.従業員の報酬の20%に相当する国家社会保険院(INSS)の積立金や、企業の売り上げに対して課せられる社会統合基金/社会保険融資負担金(PIS/Cofins)などの負担金、がある。
輸入税について政府は、2012年10月から国内産業支援策の一環として100品目にわたる輸入税を1年間の期間限定で引き上げた(おおむね12〜15%程度の輸入税を、25%に引き上げ)。2013年8月には、予定どおり2013年10月に従来の水準に引き下げると発表しており、部品を海外から輸入する企業にとっては、調達コストが減ることになる。
○州税には、a.商品流通サービス税(ICMS)、通信サービス税、車両所有税などの各種税金、b.裁判所への手数料や州環境局のライセンス発行料、営業ライセンス発行料などの行政サービス料金、がある。
○市税には、a.家屋税、サービス税、不動産売買税などの各種税金と、b.営業ライセンス発行料などの行政サービス料金、がある。
<本支店間の商品移動は課税対象外の判例も>
今回の勉強会で特に議論になったのが、前述の州税のICMSの課税に関する最近の判例だ。ICMSについては、法律上、本店−支店間の商品の移動についても課税されることになっているが、所有権の変更が生じない本店−支店間の商品の移動ではICMSが発生しないとの判例が最近出ている。
この点についてジルセウ弁護士は、一概に全ての事案について支払った税金を取り戻せるわけではない、と前置きした上で、「ICMSは税率が高く、金額のインパクトが大きいので、今後、同様の訴訟が増えることも想定される。進出日本企業も、検討してみる価値はあるのでは」とコメントしている。
同弁護士はまた、「弁護士への依頼方法の1つとして、定額の報酬を支払うのではなく、成功報酬型での契約もある。成功報酬型の場合、勝訴すれば一定割合の成功報酬を支払う必要があるが、敗訴の場合は、特段の弁護士費用を負担する必要がないメリットもあるため、企業としてうまく使い分けることが重要」と付け加えた。
(井上徹哉)
(ブラジル)
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