財政再建策に合意−2013年に財政赤字のGDP比3%達成へ−
アムステルダム発
2012年05月15日
ルッテ内閣は4月27日、前日に主要政党間で2013年予算案について合意に達したことを受け、13年の財政赤字はEU基準のGDP比3%以内に収まるとEUに報告した。しかし、同内閣は予算案をめぐる連立政権内部の不一致で4月23日に総辞職し、現在は新内閣発足までの暫定内閣で9月に総選挙が行われる予定。総選挙の結果次第では、合意の実施が危ぶまれる。
<EU基準の順守に苦闘したルッテ内閣>
オランダを含むユーロ圏諸国はEUの安定成長協定の下で、4月30日までに財政政策について安定プログラム〔ユーロ圏以外のEU加盟国は収斂(しゅうれん)プログラム〕を欧州委員会に提出することになっている。オランダの11年の財政赤字はGDP比4.7%(2012年4月26日記事参照)。これを13年にEU基準のGDP比3%以内に抑えるための具体策の提示が求められ、約2ヵ月にわたって財政の健全化案について連立政権内で協議が続けられていた。
既に12年予算(2011年10月11日記事参照)で大幅な歳出削減を行っているオランダにとって、財政健全化へのさらなる取り組みは、付加価値税の増税や年金制度の見直しなど国民に負担を強いる内容になる。これはルッテ内閣で閣外協力してきた自由党(PVV)の政策に反するため、同党は当初から財政健全化に向けた取り組みに反対だった。そして4月23日、長期にわたる協議は実を結ぶことなく、PVVは閣外協力からの離脱を表明した。これによりルッテ政権は下院での過半数を維持することができなくなり、総辞職した。
しかし、財政健全化策については、デ・ヤーヘル財務相による野党との協議の結果、4月26日に野党の社会党、民主66(D66)党、緑の党(GL)、キリスト教連合(CU)との合意ができ、下院で過半数の賛成を得る見通しとなった。今回の合意で、13年予算を10年の政権発足時の政策合意の数値から財政赤字額を120億ユーロ削減する予定で、その結果、財政赤字はGDP比3%以内に収まる見込み。
<9月の総選挙次第で合意の実行は不透明>
今回の財政健全化への合意の主なポイントは、不動産取得に伴う利子部分を所得税から控除する制度の見直し、不動産取得税の減税(現行6%から2%へ)、公務員給与の2年間の凍結、国民年金支給年齢の段階的引き上げ(現行65歳から67歳へ)、付加価値税の増税(現行19%から21%へ)、銀行税の増税など。競争力の障害となっている労働者保護制度の見直しなどにも触れている。
しかし、ルッテ政権の総辞職により、9月12日に総選挙が行われる予定で、結果次第では、今回の合意が実行されるか不透明な状況だ。
各国が提出した安定・収斂プログラムは欧州委ウェブサイトで閲覧できる(ただしオランダの報告は5月7日現在、オランダ語のみ)。
(川西智康)
(オランダ)
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