11年の財政赤字はGDP比4.7%−3年連続でEU基準上回る−

(オランダ)

アムステルダム発

2012年04月26日

統計局(CBS)によると、2011年の財政赤字はGDP比4.7%で、3年連続でEU基準を上回った。

<政府債務残高もEU基準上回る>
CBSは3月30日、11年の財政赤字はGDP比4.7%だったと発表した。10年の5.1%からやや改善したものの、EU基準の3%を上回った。財政赤字がEU基準を上回るのは、3年連続になる。また、政府債務残高もGDP比65.2%で、EU基準の60%を上回った。

10年に比べ歳入は0.8%増加、歳出は0.2%増だった。11年の赤字額はわずかに減少したが、その額は280億ユーロに達している。

債務残高の減少は、地方自治体の支出削減努力に負うところが大きい。地方自治体は外部委託を増やしたり、固定資本を削減したりするなど大幅な支出削減に取り組み、財政支出は10億ユーロ減少し、30億ユーロ強になった。

<景気後退で減少する収入>
中央政府の財政赤字額は、170億ユーロだった。10年に比べると、福祉分野への支出が9億ユーロ増加した。収入は、中央銀行(DNB)からの配当収入が14億ユーロ減少した。付加価値税(VAT)収入も、消費の減退に伴い100億ユーロ減少したほか、譲渡税収入は10年に比べ9億ユーロ減少した。譲渡税収の減少は、11年6月に譲渡税率の引き下げを導入したためだ。このように収入が減少する中、中央政府は収入の減少を支出の削減で補おうとした。

社会基金は70億ユーロの赤字だった。失業手当や特別医療費保険のための基金は、ともに大幅な赤字を記録した。健康保険基金は保険料が引き上げの結果、収支は若干のプラスだった。

<臨時収入に助けられた11年会計>
政府債務残高は11年に230億ユーロ増加し、11年末時点では3,930億ユーロに達した。11年の赤字額は280億ユーロだったが、財政収支には換算されない政府保有株の売却などの臨時収入の影響で、増加分はそれより少なかった。また、ING銀行とエイゴン保険への貸付金が返済され、政府は50億ユーロ強を受け取った。一方で債務危機のEU加盟国への貸し出し30億ユーロが債務を増加させる要因になった。

オランダにとって財政赤字の解消が急務になる一方、この問題をめぐっては、財政再建策についての意見対立を背景に、ルッテ首相が4月23日に辞表を提出。10年10月からの連立政権が崩壊した。早ければ6月にも総選挙が実施されると報じられている。

(川西智康)

(オランダ)

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