中国初の水素燃料電池ハイブリッド機関車の試験運行開始

(中国)

上海発

2021年11月08日

中国の電力大手である国家電力投資集団の内モンゴルエネルギー社などは10月29日、中国初となる水素燃料電池とリチウム電池を組み合わせて電源とするハイブリッド機関車の試験運行を同集団が所有する鉄道路線の錦白鉄道(注)で開始したと発表した。

今回のプロジェクトは、内モンゴルエネルギー社に加え、国家電力投資集団の水素エネルギー関連子会社である水素エネルギー科技発展(本社:北京市)、鉄道車両製造大手の中国中車大同電力機車(中車大同)の3社によるプロジェクトで、水素エネルギー科技が燃料電池の開発製造、中車大同が機関車の開発製造を担当した。内モンゴルエネルギー社は自社内で独立した電力管理システムを有しており、当該プロジェクトの実行に必要な電力供給などの面で便宜を図る。いずれも中央政府管轄の大型国有企業で、コアとなる動力部をはじめとした主要部品の全てについて、初めて国産化を実現した。

中車大同の李霊濤副総工程師(エンジニア)はプレスリリースで「水素燃料電池ハイブリッド機関車の設計速度は時速80キロ、水素をフル充填(じゅうてん)した状態で24時間半の連続走行が可能で、平地での最大牽引能力は5,000トン。環境保護の面でも優れており、従来のディーゼル機関車に比べ、貨物1万トン当たり80キログラムの炭素排出量削減となる。延長距離が627キロに達する錦白鉄道にこのハイブリッド機関車が全面的に投入されれば、1年間で削減される炭素排出量は9万6,000トンに達する。これは600万本の植林を行うのに等しい」とコメントした。

また、同社の関海軍総経理は「水素燃料電池ハイブリッド機関車は、2030年カーボンピークアウト、2060年カーボンニュートラルの国家目標達成に向けた、国家電力投資と中国中車の主要な取り組みとなる」と述べた。

中国では水素燃料電池自動車のモデル都市が選定され、商用車を中心に導入が進められている(2021年9月1日2021年9月7日記事参照)。自動車以外にも、鉄道や船舶、定置用燃料電池などを用途とした計画も多数あり、幅広い分野での水素エネルギー利用に向けた取り組みが進められている(2021年3月調査レポート参照)。

(注)遼寧省錦州と内モンゴル自治区白音華を結ぶ路線。

(高橋大輔)

(中国)

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