オーストラリアのライナス、ミナスジェライス州のレアアース開発会社を買収へ

(ブラジル、オーストラリア、日本)

サンパウロ発

2026年10月15日

オーストラリアのレアアース大手ライナス・レアアース(以下、ライナス)は9月30日、ブラジルのミナスジェライス州でレアアース鉱区「カルデイラ・プロジェクト」を開発するオーストラリアのメテオリック・リソーシズ(以下、メテオリック)の全株式を取得することで合意したと発表した。両社の共同リリースによると、買収は全額株式交換方式で、メテオリック株1株にライナス株0.0207株を割り当てる。9月30日時点のライナス株の直近60日間の出来高加重平均株価に基づく買収額は約9億6,800万オーストラリア・ドル(約1,084億円、豪ドル、1豪ドル=約112円)。ライナス株の直前終値で換算した1株当たり買収価格は0.286豪ドルで、メテオリックの直前終値に68.4%のプレミアムを上乗せした水準となる。ライナスは買収完了まで最大1億1,000万豪ドルのつなぎ融資も提供する。

カルデイラ・プロジェクトは、ミナスジェライス州南部、ポソス・デ・カルダス近郊のカルダス市に位置するイオン吸着型粘土鉱床(注1)で、JORC規格(注2)準拠の同型鉱床として中国以外で最大だ。9月30日付の現地紙「CNNブラジル」によると、資源量は16億3,100万トンに上る。共同リリースによると、このうちネオジム・プラセオジム酸化物は80万2,000トン、ジスプロシウム・テルビウム酸化物は4万1,000トンを占める。メテオリックの最終事業化調査(2026年7月)では、初期投資額を4億9,800万米ドルと見積もる。ライナスは、本件を、西オーストラリア州のマウント・ウェルド鉱山に続く第2の中核鉱床と位置付ける。

買収の実施には、メテオリックの株主総会とオーストラリア裁判所の承認に加え、2026年9月に成立した重要・戦略鉱物国家政策法(注3)に基づくブラジル当局の承認が条件となる。鉱山・エネルギー省は9月30日の声明で本件を歓迎した。10月1日付の地元紙「オ・ファトール」によると、アレシャンドレ・シルベイラ鉱山・エネルギー相は同日、現地紙「CNNブラジル」に対し、ライナスの幹部からポソス・デ・カルダス地域に分離工場を設置する計画を伝えられたと明かし、中国以外で最大規模となり得ると述べた。一方、同紙によると、ライナスのダニエル・ハバス戦略・IR担当副社長は同日の投資家向け説明会で、ブラジルでの工場建設について明言を避けた。同副社長は、カルデイラ産の炭酸レアアースをマレーシアの既存工場で処理できるようメテオリックと調整を進めていると説明し、国立経済社会開発銀行(BNDES)がブラジルでの工場への融資に関心を示しているとも述べた。両社は2027年3月までの完了を見込む。

なお、ライナスには双日とエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が日豪レアアース(JARE)を通じて出資しており(注4)、ブラジル産レアアースが将来的に日本向け供給源となる可能性も注目される。

(注1)イオン吸着型粘土鉱床:風化した花こう岩などの粘土にレアアースのイオンが吸着した鉱床。硬岩鉱床に比べ採掘・抽出が容易で、重希土類を比較的多く含むとされる。商業生産はこれまで中国南部やミャンマーに集中してきた。

(注2)JORC規格:オーストラリアの合同鉱石埋蔵量委員会(Joint Ore Reserves Committee)が定める鉱物資源量・鉱石埋蔵量の報告基準。オーストラリア証券取引所(ASX)の上場規則により、オーストラリアでの資源量・埋蔵量の報告に準拠が義務付けられている。

(注3)2026年9月16日に裁可された法律第15506号(重要・戦略鉱物国家政策)。重要・戦略鉱物の鉱業権を保有する企業の支配権変更には、新設の重要・戦略鉱物工業化国家評議会(CIMCE)の承認が必要となる。9月30日付の「CNNブラジル」は、本件が同制度下で審査される最初の大型案件となり、国内での付加価値創出が審査の焦点になり得ると指摘した。同紙によると、承認が拒否された場合や期限内に得られない場合、ライナスはメテオリックに880万豪ドルの違約金を支払う可能性がある。

(注4)JOGMECと双日の発表によると、両者は2011年に共同設立したJAREを通じ、同年3月にライナスへ総額2億5,000万米ドルの投融資を実行した。この投融資には、2010年10月に閣議決定された「レアアース総合対策」の補正予算を活用している。2022年9月には、JAREを通じてライナスの追加探鉱事業に900万米ドルを出資した。この出資は、同年3月にJAREとライナスが日本へのレアアース供給などでの協力を約した書簡合意の一環に位置付けられる。2023年3月には、JAREを通じて2億豪ドル相当の追加出資を決定した。この資金は、軽希土類の増産や重希土類の分離開始などを含むライナスの中期成長計画に充てられる。両者はこの出資に伴い、マウント・ウェルド鉱山由来のジスプロシウムとテルビウムの最大65%を日本向けに供給する契約をライナスと締結した。

(中山貴弘)

(ブラジル、オーストラリア、日本)

ビジネス短信 fe39b7bc367f1d17