G20貿易相会合、「食料の武器化」に関し共同声明発表、鉄鋼の過剰生産への対処など協議
(米国)
ニューヨーク発
2026年10月05日
G20貿易相会合が9月30日~10月1日、米国ウィスコンシン州ミルウォーキーで開催された(注1)。会合では、(1)威圧的貿易行為を通じた食料の武器化、(2)構造的な過剰生産能力・過剰生産、(3)最恵国待遇(MFN)原則、(4)グローバル・サプライチェーンにおける強制労働の排除の4つの分野が議論された。
米国通商代表部(USTR)は10月1日、G20貿易相による威圧的貿易行為を通じた食料の武器化に関する共同声明を公表
した。共同声明
では、「食料の武器化」が、人道的・経済的脅威をもたらすと非難した(注2)。なお、そのほかの3分野については、共同声明などは発表されなかった(注3)。議長を務めたUSTRのジェミソン・グリア代表は、議長声明
の中で、食料の武器化に関する共同声明の発表を「意義深い」と評価した。強制労働とMFN原則に関しては、議論の継続が見込まれるとして肯定的に総括しつつも、過剰生産能力に関しては一部の加盟国が共同声明に合意しなかったことを「残念だ」と表現した。
会合期間中の9月30日には「鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバル・フォーラム(GFSEC)」が開催された。GFSECは2016年のG20サミットで設立に合意した、鉄鋼の過剰生産能力問題への集団的対応策の策定や実施を図る国際的なプラットフォームで、現在は日本やEUなど28の国・地域が加盟する。GFSECで採択された共同声明
によると、世界の鉄鋼の過剰生産能力は2024年の6億100万トンから2028年までに7億4,500万トンへと増加し、過去10年間で最高水準に達すると見込まれている。この水準は、GFSEC加盟国・地域の現在の総生産量を3億1,900万トン上回る。GFSEC参加国・地域はこれらの見通しを受け、集団的対応なしに公平な条件の下では競争できないとの認識を共有した(注4)。
その上で、参加国・地域は「共同行動のための包括的な枠組み(ミルウォーキー・フレームワーク)
」に合意した。同枠組みでは、市場をゆがめる補助金の削減や、鉄鋼貿易データの収集・公表を通じたサプライチェーンの透明性向上、GFSEC非加盟国が関与する不審な貿易パターンの特定に向けた加盟国・地域間での情報交換、過剰生産による市場の歪曲(わいきょく)効果に対処するための輸入制限措置の検討・実施などを進める方針が示された。グリア代表は「志を同じくするパートナー諸国が(米国と)同様の政策を採用すれば、世界的な鉄鋼の過剰生産の一因となっている国々に責任を問えるだろう」として、枠組みで示された方針の実施を呼びかけた。
(注2)声明では、食料の武器化を、ある国の政府が地政学的譲歩を引き出そうとするために、食料や農産物などの輸出の遅延や停止といった措置を利用して多国・地域に圧力をかけることと定義づけた。
(注3)ただし、グローバル・サプライチェーンにおける強制労働に関しては、米国、メキシコ、アルゼンチンの3カ国が共同声明を発表
した。
(注4)枠組みの策定は、2025年10月開催のGFSECで合意していた。
(滝本慎一郎)
(米国)
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