世界銀行報告書、中東・北アフリカのAI活用に地域差、言語データ不足も課題と指摘

(中東、湾岸協力会議(GCC)、中東・北アフリカ(MENA)、アフガニスタン、パキスタン)

調査部中東アフリカ課

2026年10月09日

世界銀行は10月6日公表の報告書「分断から機会へ:人工知能(AI)、雇用、成長(From Divide to Opportunity: AI, Jobs, and Growth)」で、中東・北アフリカ・アフガニスタン・パキスタン(MENAAP)地域におけるAIの活用状況と課題を分析した(10月6日付プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)がAIモデル開発能力で世界上位25カ国に入るなど地域をリードする一方、1人当たりのAI利用度では高所得国のサウジアラビアが中所得国の中で下位に分類されるチュニジアを下回るなど、地域内で大きな格差があると指摘した。

報告書によると、サウジアラビアは2024年時点で事業所の約28%がAIを導入しており、2025年のOECD平均(20%)を上回った。一方、チュニジアを「地域で1人当たりAI利用が高い国」と位置付け、背景として、AIツールが利用されやすいサービス産業がGDPの約63%を占めていることを挙げた。1人当たりの利用格差については、産業構造の違いに加え、AI関連規制や制度面の差異が影響している可能性があると分析した。

UAEに関しては、地域内で最も幅広い職種にAI利用が浸透していると評価した。具体的には管理職、営業、メディア、飲食、個人向けサービスなど専門職以外でもAIの活用が広がっているという。モロッコ、チュニジア、ヨルダン川西岸・ガザではそれぞれの所得水準に比べてAI利用が活発であると指摘した。これに対して、UAEを除く多くの湾岸協力会議(GCC)諸国では、その高い所得水準から予想されるほどAI利用が進んでいないと分析した。

MENAAP地域でのAI普及を妨げる要因の1つに「地域の言語の学習データ不足」を挙げている。アラビア語は5億人以上が使用するにもかかわらず、主要AIモデルの学習データに占める割合は0.7%にとどまり、ペルシャ語やウルドゥー語も学習データに十分反映されていないとした。

報告書は、「AIは未来の技術ではなく、すでに地域の労働市場や企業活動に影響を与え始めている」とし、AIの恩恵で当面、13~20%の職業で生産性向上の可能性がある一方で、AIによる自動化の影響を受ける職業は全体の10%未満にとどまると予想した。

(大家俊夫)

(中東、湾岸協力会議(GCC)、中東・北アフリカ(MENA)、アフガニスタン、パキスタン)

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