チリ大統領が71年ぶりにボリビアを公式訪問、経済連携・鉱業協力などで共同声明
(チリ、ボリビア)
サンティアゴ発
2026年10月22日
チリのホセ・アントニオ・カスト大統領は10月16日、ボリビアを公式訪問し、ラパスでロドリゴ・パス大統領と会談した。チリ大統領によるボリビア公式訪問は1955年以来71年ぶり(注1)。両首脳は共同声明を発表し、経済・通商、鉱業、エネルギー、通信インフラ、物流、治安などの分野で連携・協力を強化する方針を確認した。
今回の訪問では、経済補完協定第22号(ACE22、注2)の近代化交渉開始に向けた付託文書への署名が主要な成果となった。また、探鉱、重要鉱物、鉱物処理、投資などを対象とする鉱業協力覚書に署名し、鉱業分野での情報交換や技術協力を強化することで一致した。
インフラ・エネルギー分野では、電力供給の安定化や強靱(きょうじん)化に向け、将来的な電力相互接続の可能性を検討することで一致したほか、南米域内のデジタル通信網強化を目的とするチリ・ボリビア南米大陸横断光ファイバー回廊の開発に関する覚書を締結した。さらに、シカシカ-アリカ石油パイプライン逆送計画(OSSA II、注3)の推進や、物流・港湾インフラの強化を通じたボリビアの輸送・貿易環境の改善も共同声明に盛り込まれた。
物流分野では、現行の条約に基づくボリビアの自由通過制度(注4)を維持し、自由通過作業部会を再開することで一致した。チリ港湾を利用するボリビア貨物の円滑な輸送や物流改善に向けた協議を継続する。
治安面では、麻薬取引、人身売買、人身密輸、密輸、自動車盗難、環境犯罪などの国際組織犯罪への対応強化を確認した。両国は警察協力や情報共有、国境管理の強化を進めるとともに、チュンガラ=タンボ・ケマドおよびコルチャネ=ピシガ(注5)での協力を進める方針だ。
今回の会談では、ボリビアが長年主張してきた太平洋への主権的アクセス問題に関する具体的な進展はなかった。一方、両国の歴史的な見解の相違を認識しつつも、対話、相互尊重、協力を通じて関係を発展させることを確認した。両首脳は政治協議メカニズムなど既存の対話枠組みを再活性化し、2国間関係を新たな段階へ進める方針を示した。
両首脳は首脳レベルの対話継続で一致し、カスト大統領はパス大統領を2027年にチリへ公式招待し、パス大統領はこれを受諾した。パス大統領は、今回の新たな2国間アジェンダが経済活性化や貿易拡大につながり、両国民に新たな機会をもたらすとの認識を示した。
(注1)ボリビアは19世紀後半の太平洋戦争の結果、現在のチリ北部に当たる沿岸部を失い内陸国となった。その後、チリに対して太平洋への主権的アクセスの確保を求めてきた。この問題を巡る見解の相違は、長年にわたり両国関係における主要な懸案となってきた。
(注2)ACE22は、ラテンアメリカ統合連合(ALDI)の枠組みで1993年に発効したチリ・ボリビア間の経済補完協定。主に物品貿易に関する枠組みを定めているが、近年の通商環境の変化を踏まえ、投資やサービス、デジタル分野などへの対応を図るため、両国は協定の近代化交渉開始に向けた手続きを進めることで合意した。
(注3)ボリビアのシカシカとチリ北部のアリカを結ぶ石油パイプラインの逆送(リバースモード)計画。従来とは逆方向にパイプラインを活用し、アリカ港経由で輸入した原油・燃料をボリビアへ輸送することで、燃料供給の安定化を図る事業。
(注4)1904年のチリ・ボリビア平和友好条約に基づき、内陸国であるボリビアがチリ港湾を利用して第三国との貿易を行う際に、貨物の通過や港湾利用について一定の自由を保障する制度。チリ側の通関手続きの遅延や港湾民営化に伴う利用料金の上昇などを巡って、ボリビアは自由通過制度の趣旨に反すると主張してきた一方、チリは条約上の義務は履行されているとの立場を取っている。
(注5)チュンガラ=タンボ・ケマドおよびコルチャネ=ピシガは、チリとボリビアを結ぶ主要な国境通過点。物流や旅客輸送の拠点であるとともに、治安・通関分野における2国間協力の重点地点となっている。
(高橋英行)
(チリ、ボリビア)
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