英首相、年金見直しを財源に高齢者介護の無償化の計画発表
(英国)
ロンドン発
2026年10月06日
英国のアンディ・バーナム首相は9月29日、与党・労働党の党大会における演説
で、高齢者の身体介護を無償で提供する国民介護サービス(National Care Service)を創設する計画を発表した。財源には、公的年金の改定ルール「トリプルロック」(注)の見直しで生じる歳出削減分を充てる。バーナム首相は、救急外来の逼迫や介護の受け皿不足による患者の退院の遅れにより国営医療サービス(NHS)は多大なコストを負担しているとして、「このままでは、破綻した介護制度がNHSをも破綻させる」と警告した。
同日の英国政府の発表
によると、現状では65歳超の約4人に3人が老後に介護や支援を必要とし、7人に1人は10万ポンド(約2,080万円、1ポンド=約208円)を超える費用負担に直面する見込みだ。新たに導入する国民介護サービスは、食事、入浴、排泄(はいせつ)の介助などの身体介護を、支払い能力ではなく介護の必要性に基づいて提供する。介護施設の居住費や食費は対象外で、所得や資産に応じて自治体が補助する現行制度が続く。導入は次回総選挙(2029年)後に開催される次期議会期中とし、年金見直しによる歳出削減効果の拡大や、介護人材や事業者の体制整備に合わせ、対象範囲を段階的に広げる。具体的な方法や時期は、ルイーズ・ケーシー上院議員が率いる独立委員会が提言し、2027年夏に報告書として取りまとめられる予定だ。
政府は、同サービスの費用を借り入れに頼らず全額賄うとしている。トリプルロックは2030年4月まで現行のまま継続され、その後は「調整版」に移行する。調整版では、平均賃金に対する年金水準の維持を基本とし、物価上昇率と2.5%のいずれか高い率を引き上げ率の下限とする。
労働・年金省が同日公表した試算
によると、見直しで浮く年金支出は、現行ルールを続けた場合と比べて、2039年度に年間約150億ポンド、2049年度には年間約500億ポンドに上る。政府は今議会期中に必要な法改正を行う。
(注)公的年金の支給額を毎年、平均賃金の伸び率、消費者物価指数(CPI)上昇率、あるいは2.5%のうち最も高い率で引き上げる仕組み。
(佐藤遥香)
(英国)
ビジネス短信 a7614b006c1b2057





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