ベトナム、CPTPP加盟国向けに小売店舗追加の際の「経済需要審査(ENT)」免除を明確化
(ベトナム)
ハノイ発
2026年10月02日
ベトナム政府は9月3日、外国投資家による小売業への参入規制を見直す政令342/2026/NĐ-CPを公布し、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的協定(CPTPP)など、ベトナムが国際協定で経済需要審査(Economic Needs Test、ENT)撤廃を約束している国・地域の投資家について、追加の小売店舗を設立する際にENTを適用しないことを明確化した(注1)。同政令は10月18日に施行される。
ENTは、外資系企業がベトナムで2店舗目以降の小売店舗を設置する際、市場への影響や既存の小売店舗・伝統市場への影響、地域需要、新店舗設置の必要性、地域経済への貢献などを当局が審査する制度だ(注2)。これまで、小売り事業拡大の際の大きな障壁の1つとされてきた。
ベトナム商工省は2026年5月、CPTPP発効後5年の移行期間終了に伴い、加盟国投資家に対するENT撤廃義務は2024年1月から発効しているとの認識を示しており(注3)、今回の政令は、こうした国際約束を国内制度に反映したものとみられる(注4)。
日本企業はCPTPP加盟国の投資家に該当するため、制度上は追加出店時のENT審査が不要となる。もっとも、制度上の変更が実務運用にどのように反映されるかは現時点で不透明で、小売業界からは実際の運用を見極める必要があるとの声も聞かれる。
一方で、小売店舗の設立には引き続き、店舗設立許可(Retail Outlet Establishment License)の取得が必要となる。 ENT審査は免除されるものの、立地や都市計画、建築、防火などの法令要件を満たす必要があり、小売店舗設立手続きそのものが不要になるわけではない。また、ENTの適用除外は、ベトナムが国際協定で撤廃を約束した国・地域の投資家が対象であり、ENT制度そのものが全面廃止されるわけではない。
今回の措置は、ベトナム政府による市場開放と投資環境改善の一環として位置付けられ、外資系小売企業による店舗展開や投資拡大を後押しする制度改正として注目される。なお、9月6日にフエ市で開催されたレ・ミン・フン首相と日系企業との対話会においても、商工省側からENT免除の決定について説明があり、制度内容を確認の上、活用してほしいとの発言があった。
(注1)政令342/2026/NĐ-CP第22条第1項は、「ベトナムが参加する国際条約においてENT(経済需要審査)の撤廃を約束していない国・地域の投資家」が第2店舗以降の小売店舗を設置する場合にENTを実施すると規定している。これにより、CPTPPなどENT撤廃を約束する国・地域の投資家はENTの対象外となる。
(注2)政令342/2026/NĐ-CP第22条第2項は、ENTの評価基準として、市場の安定性、既存小売店舗や伝統市場への影響、地域需要、新店舗設置の必要性、地域経済・社会への貢献度、治安・安全保障との整合性などを規定している。
(注3)ベトナム商工省は2026年5月
、CPTPPに基づく5年間の移行期間が2024年1月14日に終了し、加盟国投資家に対するENT撤廃義務が発効している、との見解を示した。
(注4)ベトナム商工省は2026年5月、政令09/2018/NĐ-CPに代わる新政令の策定に当たり、ENT(経済需要審査)に関する規定をベトナムの国際約束に適合するよう修正・補充している、と説明した。政令342/2026/NĐ-CPは、こうした方針を反映したものとみられる。
(吉田薫)
(ベトナム)
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