フランス首相、治安維持のため夜間外出禁止令、特別支援基金を創設し被害事業者支援へ
(フランス)
パリ発
2026年10月22日
フランスのセバスチャン・ルコルニュ首相は10月19日、首相官邸で開かれた省庁横断の危機対策会議後に記者会見し、17日に発生した大規模暴動を受けて治安対策を強化すると発表した。政府は各県知事に対し、商店や公共施設を保護するため、19日夜から地域を限定した夜間外出禁止令の発令を求めた(注1)。
ルコルニュ首相は暴動の背景について、「極左勢力が国内で深刻な混乱を引き起こそうとしている」と指摘。さらに、一部勢力が次期大統領選の日程や実施そのものを揺るがそうとしているとの見方を示し、内務省や情報機関と連携して実態把握を進める方針を明らかにした。
夜間外出禁止令は「部分的かつ地域限定」で適用される見通しで、対象地域は自治体首長との協議を経て公表される。首相は非常事態宣言の発令も排除しない考えを示したものの、「現時点では外出禁止措置の方が適切だ」と述べた。
経済対策では、暴動や略奪の被害を受けた商店を対象に、20日から休業手当制度を100%適用する方針を表明した(注2)。また、被害事業者向けの特別支援基金を創設することも明らかにした。首相は「クリスマス商戦向けの商品在庫を既に確保している小売業者も多く、資金繰り支援が必要だ」と説明し、「今回の事態によって社会や雇用に打撃が及ぶことがあってはならない」と強調した。
ローラン・ヌニエス内務相も記者会見に同席し、今週末に予定されている新たな抗議行動に備えて警察と憲兵隊の展開規模をさらに拡大すると表明した。同相は、18日夜にもパリや複数の地方都市で散発的な騒乱が発生したとして、治安当局は引き続き警戒態勢を維持する方針を示した。
今回の抗議運動は当初、高校生や大学生が教育環境や将来への不安を訴えたデモをきっかけに始まったが、その後は物価高騰やエネルギー価格の上昇に不満を抱く市民にも広がった。労働者や地方住民に加え、「黄色いベスト」運動の支持者らも合流し、運動の焦点は若者が抱える問題にとどまらず、購買力低下や生活コストの上昇、政治への不信へと拡大している。「黄色いベスト」運動の主催者側は10月24日と31日にも抗議活動の実施を予告している(注3)。
こうした状況を受け、エマニュエル・マクロン大統領は18日にテレビ演説を行い、暴力や略奪行為を厳しく非難した。「破壊した者には責任を取らせる」と強調する一方、物価高や若者の将来への不安といった抗議運動の背景にある不満については「耳を傾けなければならない」として、対話と支援策を進める考えを示した。
(注1)19日夜、パリ市のほか、リール市やリヨン市などの一部地区で夜間外出禁止令が発令された。パリ市内では23時から20日午前6時まで、レピュブリック広場およびレ・アール地区の一部指定区域への立ち入りや移動が制限された。最新の情報は、パリ警視庁(Préfecture de Police)の行政命令のページ
(フランス語)に掲載される。
(注2)従業員を解雇せず、休業中の賃金の一部を国が補填(ほてん)する制度。
(注3)「黄色いベスト」運動は2018年、燃料税引き上げへの反発をきっかけに始まった市民運動。物価上昇や購買力低下への不満を背景に、2019年にかけて毎週土曜日を中心に抗議デモを展開し、全国へ拡大した。
(山崎あき)
(フランス)
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