イタリア上院、原子力発電再導入に向けた政府への委任法案を最終承認
(イタリア)
ミラノ発
2026年10月07日
イタリア上院は9月23日、「持続可能な原子力エネルギーに関する政府への委任法案」を最終承認した。今回可決された法案は原子力発電所の新設を直ちに許可するものではなく、原子力発電の再導入に向けた目標と原則を定め、必要な法制度を整えることが狙いだ。政府は本法律の発効から12カ月以内に、原子力発電に関する政令を制定する権限を与えられる。
イタリアは、1986年のチョルノービリ(チェルノブイリ)原発事故を受け、翌1987年の国民投票を契機に原子力発電を停止した経緯がある。ジョルジャ・メローニ首相は同日、「約40年ぶりに、イタリアで再び原子力発電に向けた法的枠組みが整う。勇気ある、合理的な選択だ」と強調した。
対象となる主な内容は、新規施設の実証、立地選定、建設、運転から廃止までの一連のプロセスに加え、核燃料の製造・再処理、放射性廃棄物や使用済み核燃料の管理、核融合エネルギーの研究開発など。安全規制や監督体制も見直し、独立した原子力安全当局の設置も検討する。また、関連する産業サプライチェーンや原子力部門を支える技術者や研究者などの専門人材育成も進める。
導入を検討する原子炉については、技術的中立性を原則とし、モジュール型や先進技術を含む最良の原子力技術の活用を想定している。環境・エネルギー安全保障省が2024年に発表した「エネルギーと気候に関する国家統合計画(PNIEC)」では、2050年までに原子力の設備容量を8~16ギガワットとし、国内電力需要の11~22%を賄うシナリオも示されている。
産業界も今回の法案成立を歓迎している。イタリア産業連盟(Confindustria)は「国の未来にとって歴史的な転換点」と評価。国内では既に70社以上が原子力関連事業に携わっていることを挙げ、原子力計画の再始動により約11万7,000人の雇用創出と年間500億ユーロ超の経済効果を試算している。
ただ、ジルベルト・ピケット・フラティン環境・エネルギー安全保障相は、2033~2034年ごろの原発稼働開始を見込む一方、本法案が下院を通過した2026年6月に、新たな国民投票の可能性について「2028年か2029年に行われると想定している」との認識も示しており、今後政府方針の見直しを余儀なくされる余地も残されている。
(平川容子)
(イタリア)
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