スイスの中立性の厳格運用と、食料自給率の引き上げを求める2つの国民発議が否決

(スイス)

ジュネーブ発

2026年10月06日

スイスで9月27日に国民投票(注1)が実施外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされた。今回、国民投票が実施されたのは、スイスの中立性に関する、より厳格な運用を目指すイニシアチブとスイスの食料自給率の引き上げを目ざすイニシアチブの2つの国民発議(注2)で、前者が賛成29.84%、反対70.16%、後者が賛成27.47%、反対72.53%で、ともに否決された(注3)。

スイスの中立は1848年以来、連邦憲法に明記され、国際的にもよく知られており、国際法により保障されている。スイスはNATOなどのいかなる軍事・防衛同盟にも加盟しておらず、その中立性を背景に国際紛争における調停役や仲介役を務めてきた。また、スイスは中立を維持しつつも、安全保障を強化するために他国と協力しており、国際秩序を支える観点から制裁措置に参加することもある。

例えば、国際法に違反するロシアによるウクライナへの攻撃を受けて、スイスはEUの制裁措置の大部分を採用した。今回否決されたイニシアチブは、中立に関するより厳格な運用を目指すもので、スイスの中立が永続的かつ軍事的であることを憲法に明記することを求めていた。同イニシアチブの提唱者たちは、スイスがEUの制裁措置を適用したことで、中立性の適用において十分な厳格さを欠き、ひいては紛争に加担したと考えていた。一方、連邦参事会(内閣に相当)と連邦議会は、経済制裁の導入は中立と両立するとしており、このイニシアチブが可決されれば交戦国に対する多くの制裁措置を講じることができなくなり、スイスの国益や国際的な信用を損なう恐れがあるとして反対キャンペーンを行ってきた。

イグナツィオ・カシス副大統領兼外相は、今回の結果は「中立性そのものに対する否定」ではないとの認識を示した。また、スイス公共放送・ドイツ語圏放送局(SRF)のインタビューに対して、有権者が従来の実績ある柔軟な中立政策の継続を選択した結果だと説明、個々の事案に応じて判断を下すことを可能にする政策への支持であり、こうした裁量の余地が連邦参事会や連邦議会にとって不可欠で、全てに一律に当てはまる解決策はないと補足した。

また、今回否決された食料に関するイニシアチブは、スイスが海外への食料依存度を低減させるため、食料の国内生産量を大幅に増やすことを目指すものだった。2022年から2024年までの期間において、平均45%だった食料の純自給率(注4)を少なくとも10年以内に70%に引き上げることを目指すもので、農業・食品部門が、動物性食品の生産を減らし、植物性食品の生産へと大きく転換することを求める内容となっていた。連邦参事会は2050年までに食料の純自給率を少なくとも50%に引き上げることを計画しているが、連邦参事会と連邦議会は、このイニシアチブは行き過ぎだと考えていた。10年以内に純自給率70%を達成するには農業や食生活への過度な国家介入が必要となり、多額の費用や消費者の選択肢の制限を招くと懸念していた。

(注1)スイスでは年に最大4回、国民投票が実施される。

(注2)有権者10万人以上の署名を18カ月以内に集めることを要件として、国民による憲法改正の提案が可能。

(注3)10月1日午前9時10分時点で公表された修正結果。

(注4)スイス国内で生産・消費される食料の割合(カロリーベース)を示す指標で、国内生産の一部が飼料の輸入に依存している事実を考慮に入れたもの。

(田中晋)

(スイス)

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