米運輸省、燃費規制を大幅緩和、2031年製車平均を34.9mpgに引き下げ

(米国)

ニューヨーク発

2026年09月30日

米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は9月25日、2022~2031年製車(MY)の乗用車・小型トラックの企業別平均燃費(CAFE)基準を見直す最終規則「安全で手頃な燃費規制III(SAFE III)」PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)に署名した。2031MYの基準値を、2024年規制(注1)の1ガロン(約3.785リットル)当たり49.3マイル(49.3mpg、約78.88キロメートル)から、34.9mpgへ引き下げる(2024年6月17日記事参照)。今回の見直しにより、2024年規制に比べ、規制対応コストが車両1台当たり平均1,289ドル削減される見込みで、車両価格の抑制を通じて、消費者の選択肢の拡大につながるとしている。

基準値の緩和に加え、2024年規制からの主な変更点は、次のとおりだ。

(1)基準値策定から電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の電動走行分を除外

NHTSAは、2024年規制がEV普及を前提に厳しい燃費基準を設定したことで、車両価格の上昇につながったと指摘した。これを受け、SAFEIIIでは、CAFE基準を定める米国連邦法典第49巻第32902条(h)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを法的根拠として、EV・PHEVの電動走行分を基準値設定の前提から除外した。同条では、基準値策定にあたり、バッテリー式電気自動車(BEV)の燃費を考慮せず、PHEVについてもガソリンまたはディーゼルのみで走行するものとみなすよう定めている(注2)。これに対し、2024年規制では、同条項を限定的に解釈し、EV・PHEVの導入は州規制への対応が理由で、またCAFE基準の対象外として販売されるEV・PHEVを基準値設定の際に考慮しないことは実態を反映していないとして、EV・PHEVを基準値設定の際に考慮できるとしていた。しかし今回の最終規則では、2024年規制の解釈は同法典に反するとし、BEVやPHEVの電動走行分を基準値設定に考慮しないことを明確化した。

(2)車両分類の見直し

車両分類にあたり、「3列以上の座席を備える車両」を非乗用車という分類から除外し、乗用車を「乗員輸送が主目的の車両」、小型トラックを「貨物輸送またはオフロード性能を持つ車両」に再分類した。2030MYから適用する。これにより、従来の規制において小型トラックに分類され、比較的緩やかなCAFE基準の適用を受けていた小型スポーツ用多目的車(SUV)などは乗用車に再分類される(注3)。NHTSAは、従来の分類基準がメーカーに対し、車両を小型トラックとして分類するための設計変更を促していたと指摘しており、今回の見直しにより、メーカーに対するこうした規制上の誘導を解消し、市場ニーズに応じた車両開発を促すとしている。

(3)2028MY以降に獲得するクレジット(注4)のメーカー間取引の廃止

クレジットのメーカー間取引がEV産業を意図的に支えてきたとして、全てのメーカーを対等な競争条件に置くとともに、各メーカーによる燃費向上技術の全車種への普及を促すとしている。

今回の署名に際し、運輸省のショーン・ダフィー長官は「ドナルド・トランプ大統領のリーダーシップのおかげで、メーカーに対し米国の家庭が望んでいない高価なEVの生産を強いていた違法な命令をついに終わらせることができた」と述べ、車両価格の抑制と消費者の選択肢確保を図る考えを示した。

一方、CAFE未達時の民事罰は現行法に基づき0ドルが維持されていることから(注5)、環境団体などからは、メーカーには基準達成を促す経済的動機がなく、CAFE規制の実効性が低下する可能性を懸念する声も聞かれる(注6)。

(注1)NHTSAが2024年6月7日に発表した2027MY以降の規制である「2027MY以降の乗用車と小型トラック(ライトデューティービークル:LDV)のCAFEと、2030MY以降の大型ピックアップトラックとバン(HDPUV)の燃費基準」の最終規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、2031MYの平均燃費50.4mpgを見込んでいたが、今回の最終規則では再計算の結果、49.3mpgに修正された。

(注2)ハイブリッド車(HEV)は、除外の対象に含まれていない。

(注3)小型トラックは、乗用車に比べて積載・牽引などの用途・性能が求められることから、同等の燃費水準を達成することが難しく、より低い燃費基準が設定されてきた。

(注4)基準値超過分を貯蓄し、未達時などに一定の要件の下で取り引きする制度。

(注5)2025年7月成立の「大きく美しい1つの法案(One Big Beautiful Act:Public Law 119-21)」第40006条外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、2022MY以降のCAFE未達に対する民事罰は0ドルと制定された。

(注6)全米大気クリーン機関協会(National Association of Clean Air AgenciesPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます):NACAA)。

(大原典子)

(米国)

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