イラク経由の国際道路輸送(TIR)利用で輸送期間が短縮、IRUが発表
(イラク、中東、欧州、トルコ)
ドバイ発
2026年09月25日
国際道路輸送連盟(IRU)は9月9日、国際道路運送(TIR)システムを利用したイラク経由の陸上輸送について、イラクが運用を開始した2025年4月1日以降、TIR証明書が5,000件以上使用されたと発表した。従来の海上輸送で45日を要していたトルコ~クウェート間がTIRを利用したイラク経由の陸上輸送によりわずか4日に短縮されたという事例も報告されている。TIRがイラク経由の国際陸上輸送で本格的に利用される段階に入るとともに、輸送時間短縮の効果も表れ始めている。
9月3日には、イラク運輸省傘下の陸運公社(GCLT)が、TIRシステムを利用して8月に実施された輸送が1,754便に達したと公表していた。IRUは4月22日時点では、過去約1年間にイラク経由で約2,000件の道路輸送がTIRの下で実施されたとしていた(注1)。
TIRは、TIR条約に基づく国際通関制度で、出発地で税関封印した貨物を国際保証の下で運び、経由国での通関・担保手続きを簡素化する。国連欧州経済委員会(UNECE)によると、GCLTはイラクでTIR証明書の発給・保証団体を務め、TIR証明書1冊当たりの保証上限は10万ユーロ。IRUは2025年11月21日、イラク政府が道路で同国領内を通過する全貨物にTIR利用を義務付けたと発表した(注2)。一方、GCLTは2026年5月に認可されたイラク企業向けTIR証明書の発給を開始し、8月にはイラク籍トラックによるサウジアラビアから中央アジア方面へのTIR運送も始まった。
IRUは9月9日、試行の陸路輸送では、トルコ南東部ガジアンテップからイラクを経由してサウジアラビアのアラル国境検問所を通り、首都リヤドまで3.9日、同国西部のマディーナまで3.7日だったと発表した。
IRUはこれに先立ち、欧州と中東を結ぶイラク経由の陸上輸送の試走事例も公表している。トルコ~クウェート間では、新鮮な果物や野菜を積んだトラック3台がトルコを出発し、イラク経由だとわずか4日でクウェートに到着した。従来の海上ルートでは45日を要しており、大幅な時間短縮となった。
さらに、ハンガリー~ヨルダン間は従来陸送では5週間を要したが、TIRを導入したところイラク経由で6日に短縮、ポーランド~アラブ首長国連邦(UAE)間は陸送で24日かかったところ、TIR導入でイラク経由だと10日に短縮した(注3)。
欧州、トルコ、ヨルダン、湾岸諸国をイラク経由で結ぶ陸上物流が実運用されていることは、日本企業が海上輸送とは別の物流選択肢を検討する材料となる。ただし、8月のTIR利用実績とホルムズ海峡を巡る海上物流リスクとの因果関係は確認できない。
(注1)IRU・UNECEの原語は「TIR Carnet(TIRカルネ)」で、本稿ではジェトロの既存表記に合わせて「TIR証明書」とした。GCLTの1,754便は「8月に実施された運行」、IRUの4月22日公表は「道路輸送件数」、9月9日公表は「TIR証明書」の冊数で、単位と集計期間が異なるため単純比較や足し上げはできない。GCLTは「1便」の定義や、トランジット・輸入・輸出別の内訳を公表していない。
(注2)IRUの発表上、義務化対象は道路でイラク領内を通過する貨物で、通常の輸入・輸出全般ではない。正確な施行開始日を示すイラク税関の公開原通達は確認できなかった。
(注3)IRUの公表日は、ポーランド~UAE間10日が2025年6月24日、トルコ~クウェート間4日が7月8日、トルコ~ヨルダン(イスタンブール~アンマン)間5日が8月5日。いずれも個別の初回・試行運行などの事例で、イラク経由TIR全体の平均所要時間ではない。8月1,754便の国別・国境別、貨物重量・金額・品目の内訳は公表資料で確認できない。
(大野晃三、オマール・アル・シャメリ)
(イラク、中東、欧州、トルコ)
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