ブラジルで重要鉱物・戦略鉱物支援法が公布
(ブラジル)
サンパウロ発
2026年09月25日
ブラジルで9月16日、重要鉱物・戦略鉱物の探鉱、採掘、選鉱、加工への支援を定める「国家重要鉱物・戦略鉱物政策(PNMCE)」を創設する法律第15506号が公布され、即日施行された(注1)。開発商工サービス省(MDIC)の同日付のプレスリリースによると、同法は探鉱・採掘に加え、選鉱、加工および都市鉱山(廃電子機器やバッテリーなどからの鉱物回収)を促進し、国内での付加価値創出の拡大を目指す。また、経済・技術・社会の発展に向け、これら天然資源の利用に関する主権の確保を図る。同法の主な内容は次のとおり。
(1)大統領府直属の重要鉱物・戦略鉱物産業化国家評議会(CIMCE)の新設:同評議会は、重要鉱物・戦略鉱物のサプライチェーンの発展に向けた政策や施策の立案を担う。そのほか、重要鉱物・戦略鉱物に関する鉱業権保有企業の支配権変更、外国企業による同企業に対しての重要な出資・影響力の取得、国の経済・地政学上の安全保障に影響し得る国際供給契約などについて、鉱山エネルギー省傘下の国家鉱業庁(ANM)とともに審査し、承認する。
(2)鉱物活動保証基金(FGAM)の創設:同基金を創設し、連邦政府が最大20億レアル(約600億円、1レアル=約30円)を出資することを認める。同基金は探鉱から加工までのプロジェクトを対象に信用リスクをカバーする保証などを提供し、企業の資金調達を支援する。また、探鉱・採掘事業、選鉱および加工に従事する企業は、施行規則の制定から6年間、毎年、当該事業の総営業収入から売値に含まれている間接税や社会保険負担金などを控除した金額の少なくとも0.2%をFGAMに出資しなければならない(注2)。
(3)税額控除を付与する連邦プログラム(PFMCE)の創設:2030年から2034年まで、重要鉱物・戦略鉱物の選鉱・加工活動および都市鉱山事業を対象に、対象事業に関連した総支出の最大20%相当の税額控除を付与する。控除額は連邦税の納付額と相殺するか、現金で還付を受けられる。税額控除の総額は年間最大10億レアル。対象はCIMCEが事前に認定したプロジェクトに限る。
ブラジル鉱業協会(IBRAM)は9月17日付の声明で、同法を「ブラジル鉱業にとって歴史的な節目」と評価した。同協会のパブロ・セザリオ会長はプレスリリースで、「この法律は、鉱業分野への投資誘致と国内向け鉱物資源の安定供給確保という、ブラジルにとって重要な2つの目標の両立を目指すものである」と述べた。
一方、重要鉱物協会(AMC)のマリザ・セザル理事会長は、現地紙「バロール」(9月16日付)の取材に対し、外国企業が関与する取引などを審査するCIMCEについて懸念を示した。同氏は「CIMCEに、最低限の権限が定められていないことは、とりわけ投資家の観点から法的不安定性をもたらす。なぜなら、ブラジルの重要鉱物分野への投資資金の80%は外国資本に依存しているからだ。さまざまな解釈や運用の余地が残されており、業界は大きな不透明感に直面している」と述べた(注3)。
(注1)同法では、重要鉱物を、国内の主要産業に不可欠であると認めている。一方、国内供給不足や輸入依存度の高さ、供給源の地理的集中、地政学リスク、市場制約、技術的ボトルネックなどにより供給が不安定化する恐れがあり、国の経済に重大な影響を及ぼす可能性がある、と定義している。戦略鉱物は、ブラジルが豊富な埋蔵量を有し、貿易黒字の創出や技術開発、地域開発、温室効果ガス排出削減に重要な役割を果たす鉱物資源を指す(エネルギー転換との直接的な関連の有無は問わない)。具体的な対象鉱物はCIMCEが定め、4年ごとに見直す。
(注2)企業には、同期間にFGAMへの出資(最低0.2%)に加え、総営業収入から売値に含まれている間接税や社会保険負担金などを控除した金額の少なくとも0.3%を研究開発(R&D)および技術革新プロジェクトに投じる義務も課す。6年経過後は、FGAMへの出資義務がなくなる一方、R&Dなどへの投資義務が少なくとも0.5%に引き上げられる(合計の下限は0.5%のまま)。
(注3)セザル氏の発言は、同法の大統領裁可を前に、議会を通過した法案について述べたもの。ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は9月16日、CIMCEの構成や権限などを規定する政令第13118号を公布した。同政令は個別案件の審査をCIMCEの執行委員会(MDICが調整役)が担うと定めたが、審査対象となる取引の範囲や判断基準は定めておらず、今後、CIMCE本会議が定める規範などに委ねられる。
(エルナニ・オダ)
(ブラジル)
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