欧州会計検査院、EUの防衛情勢を報告、2030年までの防衛力強化は容易でないと評価

(EU)

ブリュッセル発

2026年09月28日

欧州会計検査院(ECA)は9月4日、2020年から2026年7月までのEUの防衛情勢の推移と現状をまとめた報告を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

2022年のロシアによるウクライナ侵攻を受け、EUの防衛政策は、域外での危機管理・対応から、加盟国の防衛能力強化へと重点を移した。EUの防衛技術・産業基盤は、投資と加盟国間の協力が長年不足していた結果、弾薬やミサイルの不足、備蓄の枯渇、防衛装備品の生産期間の長期化、域外国からの調達への依存拡大といった課題を抱えてきた。これらの状況に対しEUは、防衛力強化に向けた取り組みを進めている(添付資料表1参照)。

投資不足の解消に向けた施策の結果、EU加盟各国は国防関連支出を拡大している(添付資料表2参照)。EU加盟国の防衛予算総額は、2022年の2,620億ユーロから2025年には4,180億ユーロへと増加した。2026年は4,540億ユーロに達する見込みだ。

報告書は、上述の動向を踏まえた機会や課題を特定した。

機会の面では、安全保障環境の悪化と防衛関連資金の拡充を背景に、防衛産業の生産能力が拡大し、イノベーションや軍民両用(デュアルユース)技術の開発が進み、防衛クラスターの形成も進んでいると評価した。特に、人工知能(AI)や量子技術の防衛分野への活用は、域外国からの調達依存の軽減につながる可能性があるとしている。

一方で、加盟国ごとに異なる防衛システムによる市場の断片化、産業上のボトルネック、政治的意思決定の遅れ、米国への依存などが依然として大きな課題であり、EUが2030年までに必要な防衛能力を整備することは容易ではないと分析した。防衛投資は増加しているものの、優先分野への投資がなお不十分である可能性があり、追加的資金投入が直ちに生産能力の拡大につながるわけではない点も指摘。また、域内調達の促進は、長期的には域外国への依存軽減に資する可能性があるが、調達プロセスの長期化やコスト上昇を招く恐れがあるとした。防衛投資が効果的に実施されなければ、インフレの加速により加盟国間の能力格差の解消が限定的になる可能性があるとも警告。加えて、防衛支出のための借り入れやEU名義債の活用、EU財政規律枠組みの一時停止措置(2025年3月21日記事参照)の利用により、政府債務削減の遅れやEU予算への負担増加を通じて、財政の持続可能性を損なうリスクがあることも指摘した。

(大中登紀子)

(EU)

ビジネス短信 6a894e03d34f1fd5